食い込ませよう乾乳期
1 死廃牛の多くが周産期
泌乳牛の死亡・廃用の約50%は分娩後2ヶ月以内に集中しています(酪農試験場調べ)。これは、分娩後の周産期疾病が大きな要因と考えられます。
周産期疾病を予防するためには、分娩前の乾乳期間の飼養管理が重要です。特に乾乳期間の乾物摂取量(以下DMI)を最大にすることがポイントです。
2 乾乳牛の目標はリンゴ形
ここでは、現地で、乾乳牛の腹囲形状と分娩後2ヶ月以内の死亡・廃用率との関係を調べた結果を紹介します。ルーメンの膨満度を示す指標である腹囲形状は、牛の正面から見て、リンゴ形、洋なし形、ボックス形の3つに分類されます(図1)。分娩後2ヶ月以内の死廃率は、ボックス形で一番高く、エサを食い込んでいるリンゴ形ほど死廃率が低い結果となりました(図2)。
図1 腹囲形状のモニタリング(出典:畜産試験場,2007年) 図2 腹囲形状と死廃率(根室農改調べ、2019年)
3 リンゴ形を目指して
(1)良質な粗飼料の給与
粗飼料は嗜好性が良く、カリウム含量の低いものをたっぷり給与しましょう。(※カリウム含量の高い飼料は、低カルシウム血症のリスクを高めます) 水分の高い細切サイレージを給与する場合は、水分の低いロールなどを併給することもDMIを高める有効な方法の一つです。
(2)飲水環境の整備
飲水量を確保することは、DMIを高めるために重要です。飲水量を増やすためには、水槽の清掃やパドックに簡易な水槽を設置することも効果的です。
写真1 パドックに設置した水槽
(3)飼養密度
飼養密度が高くなると、牛同士の競合がおきます。競合は、DMIの高い牛と低い牛の格差を生みます。
飼槽は全頭が並べるように、1頭あたり75cm以上確保しましょう。密度が高くなる場合は、パドックを併設し、草架を置くなど、どの牛も食べられる工夫をしましょう。
フリーストールの場合、牛床数に対する密度、フリーバーンの場合、休息スペースの1頭あたりの面積に注意して下さい(表1)。フリーバーンで密度が高い場合、敷料交換の頻度を増やすことも有効です。
表1 乾乳牛の密度の目安
(出典:根室農改,「平成30年営農改善資料」,2018年、酪農試験場,「乳牛の周産期管理マニュアル」,2019年)
4 まとめ
エサの中身も重要ですが、給与したエサをしっかり食い込ませるために必要な飲水環境や飼養密度なども、DMIに大きな影響を与えます。乳牛にとって快適な環境を整え、周産期疾病の予防に努めましょう。
写真2 十分な広さの乾乳舎
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