初乳の品質管理
子牛は初乳を飲むことによって初めて抗体を得ることができ、病気に対する抵抗力を持ちます。
抗体が十分に含まれている高品質な初乳でも、細菌汚染があると、腸管での抗体吸収の阻害や細菌性腸炎(下痢)の発症リスクを高めます。今回は、初乳に「細菌を入れない」、「細菌を増やさない」管理について紹介します。
初乳を細菌汚染させない
健康な乳房から搾られた初乳は無菌状態です。しかし、洗浄不良のバケットミルカーや哺乳びんを通すと初乳の細菌汚染が見られます。写真1は、前搾り後の乳とバケットミルカーで搾乳後の乳を細菌培養したものです。写真1(上)の農場は、バケットミルカーの洗浄にアルカリ性洗剤を毎回使用しています。一方、写真1(下)はバケットミルカーの洗浄に洗剤を使用していません。
写真1から、専用洗剤を利用して乳タンパクや乳脂肪をしっかり落とすことの重要性が分かります。哺乳びんでも同様です。パスチャライザーで殺菌し、生菌数が減少した乳でも、哺乳びんの洗浄が不十分な場合、乳が細菌に汚染されている事例が見られます。
バケットミルカーや哺乳びんなど哺乳に使う器具は、ミルカー洗浄と同様にアルカリ性洗剤、酸性洗剤を利用して、衛生的に管理しましょう(下図「手洗浄例」)。
写真1 初乳の細菌培養
図 バケットミルカー・ほ乳器具の手洗浄例
初乳中の細菌を増やさない
子牛に飲ませ、余った初乳をバケツなどに保存することもあります。
その際、注意が必要なのは、保存温度です。搾乳後の初乳中細菌数が低い農場でも常温保存後、細菌数の著しい増加が見られました。
初乳中の細菌増殖を抑えるためには、バルク乳と同様に、4℃以下で保存する必要があります。搾乳直後の初乳を冷蔵庫に入れても温度の低下は緩やかです。細菌増殖を抑えるために、初乳の温度を速やかに下げる必要があります。そのため、水冷却してから冷蔵保存することを推奨します(写真2)。
冷蔵保存している初乳でも低温細菌が増殖するため、遅くとも翌日には使用し、2日以上冷蔵保存はしないようにします。2日以上保存する場合は冷凍保存しましょう。
写真2 冷水で一次冷却
細菌汚染の少ない良質な初乳の給与で、丈夫な後継牛を育てましょう。