|
|
乳量旬報や乳検速報に記載されているMUN(乳中尿素態窒素)は、給与飼料のエネルギーとタンパク質のバランスを表わす指標です。バルク乳のMUNと乳蛋白の数値、および糞や被毛のツヤの状態などをチェックすることで、おおよその牛群の栄養状態を判断することができます。特にMUNが高い牛群では、授精回数が多くなり、空胎日数が長くなるなど繁殖成績が悪化する傾向が見られます。
|
(1) MUNと乳タンパク率の関係(バルク乳)
|
MUN
(mg/dl) |
14
以
上 |
「1」
高MUN
低乳タンパク |
高MUN
乳タンパク適正 |
「2」
高MUN
高乳タンパク |
エネルギー不足
給与タンパクの過剰 |
給与タンパクの過剰 |
エネルギー過剰
給与タンパクの過剰 |
14
~
10 |
MUN適正
低乳タンパク |
許容範囲
|
MUN適正
高乳タンパク |
エネルギー不足 |
農場によってはMUNが
12を超えた程度でも影
響が出る。
|
エネルギー過剰 |
10
以
下 |
「3」
低MUN
低乳タンパク |
低MUN
乳タンパク適正 |
「4」
低MUN
高乳タンパク |
エネルギー不足
給与タンパクの不足 |
給与タンパクの不足 |
エネルギー過剰
給与タンパクの不足 |
|
3.0以下
|
3.0~3.4
|
3.4以上
|
乳タンパク(%)
|
|
「1」の状態・・・牛体の削痩(さくそう)、乳房炎など疾病の多発、受胎率の低下。
放牧牛群に多い。 |
|
タンパク濃度の低い飼料銘柄を選択し、ビートパルプなど繊維源の補給、コーン、大麦などエネルギー飼料を増やす。
放牧期はバルク乳MUNを16程度までに抑える。 |
「2」の状態・・・牛体の過肥、乳房炎など疾病の多発。給与飼料が無駄になっている。
|
|
エネルギー濃度およびタンパク濃度の低い銘柄を選択するか、配合給与量を減らす。 |
「3」の状態・・・牛体の削痩、乳量の低下、疾病の発症、乾物摂取量の絶対量が不足。
|
|
粗飼料、濃厚飼料を増やす。 |
「4」 の状態・・・牛体の過肥、乳量の頭打ち。 |
|
タンパク濃度の高い飼料を給与し、エネルギー濃度を下げる。 |
|
(2) MUNと乳タンパク率のおおまかな傾向 |
MUN |
高い |
- 受胎率の低下や繁殖障害、疾病の多発。
- 有毒なアンモニアを尿素に解毒するために肝臓機能を酷使
→ エネルギーの浪費や肝機能障害、免疫力低下する。
|
低い |
- タンパク不足による繁殖成績の悪化や乳量の低下が起こる。
|
乳タンパク率 |
高い |
|
低い |
|
|
(3)MUNと飼料給与形態の関係 |
TMR体系 |
MUNは年間をとおして変動は少ない |
ロールパック体系 |
品質の差による影響を大きく受けるためMUNの変動幅が大きい。 |
放牧期 |
放牧草は分解性タンパク質が高く、MUNは高めに推移。
繊維やエネルギーを充足させないとMUNはさらに上昇する。 |
|
(4)まとめ |
牛の栄養状態や繁殖成績の悪化は、一概にMUNだけで説明することはできませんが、それでもMUNの動向を注視しながら、粗飼料と濃厚飼料のバランスを考えて適正範囲に近づけることで、おおかたの牛を健康な状態で飼うことができます。
ここで大事なのは、個体毎のMUNにとらわれすぎずに、あくまでも牛群全体のバルク乳のMUNの動向をチェックすることです。
「(1)MUNと乳タンパク率の関係」 を参考にしながら、飼養管理技術向上に役立ててください。 |