平成19年度酪農技術の再点検02根室農業改良普及センター北根室支所

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2 MUN(乳中尿素態窒素)でバランスチェック 

 乳量旬報や乳検速報に記載されているMUN(乳中尿素態窒素)は、給与飼料のエネルギーとタンパク質のバランスを表わす指標です。バルク乳のMUNと乳蛋白の数値、および糞や被毛のツヤの状態などをチェックすることで、おおよその牛群の栄養状態を判断することができます。特にMUNが高い牛群では、授精回数が多くなり、空胎日数が長くなるなど繁殖成績が悪化する傾向が見られます。

 

(1) MUNと乳タンパク率の関係(バルク乳)

 
MUN
(mg/dl) 
 
14

「1」
高MUN
低乳タンパク
高MUN
乳タンパク適正 
「2」
高MUN
高乳タンパク
エネルギー不足
給与タンパクの過剰
 給与タンパクの過剰 エネルギー過剰
給与タンパクの過剰 
14

10 
MUN適正
低乳タンパク 

 許容範囲

 MUN適正
高乳タンパク
エネルギー不足

 農場によってはMUNが
12を超えた程度でも影
響が出る。

エネルギー過剰
10

「3」
低MUN
低乳タンパク 
低MUN
乳タンパク適正
「4」
低MUN
高乳タンパク
エネルギー不足
給与タンパクの不足 
給与タンパクの不足 エネルギー過剰
給与タンパクの不足 
 

3.0以下 

3.0~3.4 

3.4以上 

乳タンパク(%)

 
 「1」の状態・・・牛体の削痩(さくそう)、乳房炎など疾病の多発、受胎率の低下。
            放牧牛群に多い。
q2fig1.gif  タンパク濃度の低い飼料銘柄を選択し、ビートパルプなど繊維源の補給、コーン、大麦などエネルギー飼料を増やす。
放牧期はバルク乳MUNを16程度までに抑える。

 

「2」の状態・・・牛体の過肥、乳房炎など疾病の多発。給与飼料が無駄になっている。

 q2fig1.gif  エネルギー濃度およびタンパク濃度の低い銘柄を選択するか、配合給与量を減らす。

 

「3」の状態・・・牛体の削痩、乳量の低下、疾病の発症、乾物摂取量の絶対量が不足。

 q2fig1.gif  粗飼料、濃厚飼料を増やす。
「4」 の状態・・・牛体の過肥、乳量の頭打ち。
q2fig1.gif  タンパク濃度の高い飼料を給与し、エネルギー濃度を下げる。
(2) MUNと乳タンパク率のおおまかな傾向 
 
MUN  高い 
  • 受胎率の低下や繁殖障害、疾病の多発。
  • 有毒なアンモニアを尿素に解毒するために肝臓機能を酷使
    → エネルギーの浪費や肝機能障害、免疫力低下する。
低い
  • タンパク不足による繁殖成績の悪化や乳量の低下が起こる。 
乳タンパク率 高い 
  • 過肥傾向。 
低い 
  • 削痩傾向。乳量の低下や繁殖障害が起きやすくなる。 
 (3)MUNと飼料給与形態の関係
TMR体系 MUNは年間をとおして変動は少ない 
ロールパック体系  品質の差による影響を大きく受けるためMUNの変動幅が大きい。 
放牧期  放牧草は分解性タンパク質が高く、MUNは高めに推移。
繊維やエネルギーを充足させないとMUNはさらに上昇する。
(4)まとめ 
  牛の栄養状態や繁殖成績の悪化は、一概にMUNだけで説明することはできませんが、それでもMUNの動向を注視しながら、粗飼料と濃厚飼料のバランスを考えて適正範囲に近づけることで、おおかたの牛を健康な状態で飼うことができます。

 ここで大事なのは、個体毎のMUNにとらわれすぎずに、あくまでも牛群全体のバルク乳のMUNの動向をチェックすることです。

「(1)MUNと乳タンパク率の関係」 を参考にしながら、飼養管理技術向上に役立ててください。

 

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