平成19年度酪農技術の再点検14根室農業改良普及センター北根室支所

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 14 サイレージ用とうもろこしの導入にあたって

 

 最近、とうもろこしを中心とした濃厚飼料の原料価格が高騰しています。このような状況の中で、地域のサイレージ用とうもろこし栽培に関心が高まってきておりますが、導入には慎重な検討を重ねる必要があります。

 

(1) 栽培時の注意

  1. 当地域において、5月~9月の0℃以上の積算温度が2,200℃を超えない場合、マルチ栽培であっても収穫適期の黄熟期には安定して達しません(図1)。
  2. 台風、低気圧等による風害・倒伏被害を受けると収穫が困難となり、収量が激減する恐れがあります。

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図1 過去10年の登熱状況(マルチ)と積算気温(中標津)の推移

 

 (2) サイレージ用とうもろこしと牧草サイレージの経済性評価

 サイレージ用とうもろこしと牧草サイレージの生産費を表1に示しました。当地域における牧草サイレージ(1番草、出穂期)のTDN単価25.4円と比べ、サイレージ用とうもろこしは黄熟期に収穫(マルチ:32.9円、露地:26.3円)しなければ割高となります。

 表1 サイレージ用とうもろこし及び牧草サイレージの生産費(10a当たり) 
 

 サイレージ用とうもろこし

 牧草サイレージ

 マルチ栽培

 露地栽培

 1番草

生育ステージ  黄熟期  糊熟期 乳熟期  黄熟期  糊熟期  乳熟期  出穂始期  出穂期  穂揃期 
平均収量(kg/10a) 

5,400

4,300   

 2,400  

乾物(%) 

 28

 24

 19

28

 24

 19

 18

 19

 20

TDN(%/乾物) 

 72

 70

 66

 72

 70

 66

 65

 60

 56

TDN単価(円/kg) 

 32.9

 39.5

 52.9

 26.3

 31.5

 42.2

 24.8

 25.4

 25.9

現物単価(円/kg) 

   6.6

 5.3

   2.9

栽培経費(円/10a) 

   35,853円

 22,767円

   6,960円

・サイレージ用とうもろこしは生草成分値(根釧農試)
・栽培経費は、耕起・播種・収穫作業とも全面委託した
 

 (3) 牧草サイレージ主体給与たコーンサイレージ併給との飼料費の比較

 表2の飼料計算の結果からコーンサイレー ジを併給することで、1日1頭当たり15円、飼料費が安くなることが分かります。搾乳牛100頭に18kg/1頭、毎日給与すると年間で15円×100頭×305日=約458千円の飼料費の削減が実現できます。

 表2 飼料費の比較(07.2月時点の飼料単価より)
 給与メニュー  牧草サイレージ主体 牧草サイレージ+コーンサイレージ  算出kg単価 
 牧草サイレージ

 45.0kg

 28.0kg

2.90円 

 コーンサイレージ  

 18.0kg

6.60円 

 乳配18

 8.5kg

 7.0kg

 51.00円

 ビートパルプ

 2.5kg

 2.5kg

 31.00円

 圧ぺんコーン

 2.0kg

 1.0kg

 42.00円

 大豆粕

 0.3kg

 1.0kg

 48.00円

 

飼料費/日/頭    740円             725円
 

 表2の設定
  牧草サイレージ  :TDN 60%、CP 12%、乾物率 20%
  コーンサイレージ  :TDN 72%、CP  8.8%、乾物率 28%
(マルチ栽培を使用した場合)
  体重 650kg 、 乳量 30kg 、 乳脂率 4.0%

 

 栽培限界地帯である当地域のコーン栽培は、天候に左右されやすく不安定です。

 当地域の有望品種である極早生品種「ぱぴりか」(根釧農試育成)であっても、栽培に対しては熟慮が必要です。

 

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