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17 雑草優先草地の収穫対応
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(1) リードカナリー優占草地
イネ科雑草の駆除は草地更新時の除草剤処理が基本ですが、湿地では草地更新後もリードカナリーが繁茂している草地があります。リードカナリーはチモシーよりも生育が早いため、このような圃場では早期刈取りを行い少しでも栄養収量の低下を抑えるのも対策の一つです。出穂が始まるとNDF含量の増加が急激に進み、乳牛の採食量が制限されるので意識的に収穫順番を早め、生育ステージが早い時期の収穫を目指します。
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(2) ギシギシ優占草地
- 生育が進んだギシギシが混入したサイレージは、消化率が大きく低下します(表1)。
表1 ギシギシ混入サイレージの家畜利用性(1986出岡ら、北草研報より一部改変)
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乾物摂取
体重当% |
消化率(%) |
TDN(乾物中)
防除圃場を100とした場合
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乾物 |
粗蛋白質 |
NFE |
防除を実施した圃場 |
2.4
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62.0
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62.5
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61.1
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100
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ギシギシ混入(DM中18%)圃場 |
1.9
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57.3
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51.1
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58.4
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93.4%
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※NFE=糖・でん粉等の可溶性無窒素物
※※1番草7/1収穫 |
- ギシギシはチモシーよりも生育が早いため、刈り遅れると結実して種子が草地に飛散して繁茂します。
- 刈り遅れて結実するとサイレージ中に多くのギシギシの種子が混入します。そのサイレージを乳牛が採食して糞中に出た種子でも発芽能力があります(写真1)。
その糞が牧草地に還元されることによりギシギシの繁茂に繋がります。
ギシギシは草地更新後も除草剤での対応が可能ですが、それでもギシギシが優占している草地を見かけます。そのような圃場は意識的に収穫順番を早めることによって、消化率及び採食可能量の低下を少しでも抑えます。結実前に収穫することにより種子の飛散の抑制につとめましょう。 |
写真1 スラリー中のギシギシ種子発芽試験
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(3) シバムギ優占草地
シバムギが優占した草地のサイレージの栄養価は、チモシーのそれと比較すると歴然と劣ります(図1)。つまり同じ草地から採れる収量としては大差がなくても、栄養収量として考えた場合に大きな差が出てきます。
シバムギは地下茎で増殖するため、一度草地全体に広がってしまうと、駆除が厄介な雑草です。そうなると、ラウンドアップ等(グリホサート系除草剤)による前植生処理が必要になります。
したがってシバムギやリードカナリーグラス等の地下茎型雑草を侵入させないよう、チモシーやマメ科牧草の密度を保つことが大事です。そのためには定期的な石灰資材の施用により、草地のpHを維持し、適正施肥を行なってチモシーの衰退やマメ科率の低下を防ぐことが重要です。
一度、自分の草地のチモシーがシバムギに占領されていないか確認してみてはいかがですか?
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図1 再生草の草種別TDN含有率(平成14年北海道普及推進事項) |
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~~ 北根室管内シバムギ注意報 ~~
あなたの草地はシバムギ畑になっていませんか?
最近、チモシーにとって代わってシバムギが目立つ草地をよく見かけます(写真1)。
チモシーとシバムギは出穂するまでは、草姿が非常によく似ていて判別しにくい草種です。自分の草地に生えているのはチモシーだと思っていたら、実はシバムギばかりだった、ということがよくあります。
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写真2 チモシー(●)に混じるシバムギ(▲)
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図2 葉の付け根で見る判別方法
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-チモシーの見分け方-
シバムギとチモシーの見分け方は、葉の付け根部分に違いがあります(図2)。チモシーには葉舌(ようぜつ)という白い膜が付いていますが、シバムギにはありません。対してシバムギには葉耳(ようじ)という鎌形のヒゲが出ていますが、チモシーにはありません。
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判別部位
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葉舌 |
葉耳 |
種子以外のふえ方 |
シバムギ |
ない |
ある |
地下茎 |
チモシー |
ある |
ない |
分けつ(株) |
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