平成19年度酪農技術の再点検18根室農業改良普及センター北根室支所

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 18 土壌中の成分を把握しよう

良質粗飼料を確保する上で、草地の土壌成分を知り問題点を改善することは重要な要素の一つです。

 

(1) 北根室地域の土壌診断結果の特徴

 図1は平成18年度北根室地域(中標津町、標津町、羅臼町)の土壌診断結果です(図1)。

 

1 pH
 基準値は5.5~6.5です。ほとんどの草地が基準値以内にあります。ただし、草地更新時の改良目標は6.5であり、基準値内でも下限の草地は注意が必要です。
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 図1 H18土壌分析結果

 

2 リン酸
 約90%の草地が基準値内か基準値以上にあります。草地の場合リン酸の過剰害はありませんが、一般的にリン酸資材は高価ですので肥料費との兼ね合いに注意しましょう。  

 

3 カリ

 約63%が基準値以上です。カリは牧草の光合成やタンパク質合成の代謝に利用される大切な要素である反面、過剰になると「ぜいたく吸収」と言われるように牧草中のカリ含有率はどんどん高まります。この牧草を摂取した牛は、低マグネシウム血症(グラステタニー)をおこす可能性が高まります。カリ過剰の牧草は乳牛の分娩直後の疾病に直結する場合があるので注意が必要です。家畜ふん尿を散布する草地は、牛舎から近い場所になりがちです。計画的な家畜糞尿散布で土壌中のカリ過剰を防ぎましょう。カリ過剰対策はふん尿の成分含有量に合わせた購入肥料の検討が重要です。ふん尿成分が解らない場合、高精度で成分分析ができるので一度分析することをお勧めします。

ふん尿の簡易分析は普及センターでも行っています。

 

4 石灰、苦土 

石灰は60%以上が基準値内にあり、苦土は約90%が基準値内か基準値以上でした。石灰不足は土壌の酸性化やマメ科牧草の生育低下を招きます。またそれぞれの成分量の拮抗作用に注意する必要があります(表1)。カリを多用すると苦土吸収が抑えられ、苦土か石灰の片方を多用すると、もう一方の吸収が抑えられます。つまり基準値以上であってもそれぞれのバランスに注意する必要があります。

 表1 拮抗作用の関係
 カリ  多q18fig2.gif作物の苦土吸収を抑える

 苦土  多q18fig2.gif作物の石灰(カルシウム)吸収を抑える

 石灰  多q18fig2.gif作物の苦土吸収を抑える

 (2) 土壌診断結果の一例

 

 図2はA農家の草地の土壌診断結果です。分析機関によって結果の表示方法は違いますが、解りやすく図表でも表現してくれます(この他に土壌成分結果の数値と基準値なども表示されます)。この草地の場合、リン酸とカリ含量の低い購入肥料を選ぶことが可能です。また、苦土含量が多いため石灰の投入量を意識する必要があるかもしれません。

 このように、土壌を分析することにより、様々な改善点が分かります。基準値よりも多ければ減肥することが可能になりますし、基準値以下なら増肥が必要になります。

 分析結果は3年間はその数値を利用できるので、しばらく分析を行ってない草地があれば一度土壌分析を行ってみましょう。 

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図2 A農法の土壌診断結果

(3) 土壌サンプルの採取方法 
  土壌サンプルを採取する場合は、化成肥料や家畜糞尿の散布前に行います。春先や一番草刈り取り直後、あるいは二番草刈り取り直後に行います。
 図3のように、草地の対角線上の5ヶ所以上から1kg程度のサンプルを採取し混合します。
 土壌採取は「採土器」を使用すれば便利です(写真1)。「採土器」は普及センターでも用意しています。

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図3 土壌サンプルの採取位置の事例

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写真1 採土管

 

 維持草地は5センチ(写真2)、更新草地は20センチ(写真1)の深さの土壌を採取します。

 土壌分析や施肥設計を希望される方は、普及センターにご相談下さい。

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写真2 維持草地の採取事例

 

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