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19 粗飼料分析値を読みとろう
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乳牛の適正な栄養管理を行うためには、我が家の粗飼料品質の把握が大切です。
各項目の意味を理解することにより、バランスの取れた飼料給与が可能となり、乳量・乳質の向上、繁殖成績の改善、疾病の予防につながります。
ここでは、ホクレンの分析結果報告書に基づき項目の見方を示します。
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(1) 分析の種類
- 基本分析
牧草体に含まれる成分で、乳牛に必要とされる成分を割合で示しています。
- 選択分析1
サイレージの発酵品質を把握するための指標となります。
- 選択分析2
飼料中の硝酸態窒素濃度を把握するときに行います。未熟な家畜糞尿やスラリーを多量施肥した草地では高い値を示します。
- 選択分析3
微量ミネラル類の分析で、乳牛に栄養管理上の問題が生じたときに必要に応じて実施します。
飼料分析は、経費がかかります。目的に沿った分析を選択しましょう。
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(2) 粗飼料名・調製形態・生育ステージ
飼料分析値は推定式によって導き出されていて、これらの報告が不正確だと、正しい値が得られません。
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(3) 分析結果
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ア 基本分析
分析成分
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項目説明
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水分 % |
飼料の水分含量を示します |
乾物 DM % |
水分を除いた飼料成分の総和で、乾物摂取量、発酵品質、嗜好性等に大きな影響を及ぼします |
pH |
良いサイレージは乳酸発酵によりpHは低くなります
(目標値 4.2以下) |
蛋白質 CP % |
飼料中に含まれる蛋白質で、早刈りやマメ科の多い牧草は、高い値を示します |
溶解性蛋白質 SIP % |
第1胃の中で、早く分解される蛋白質で、高水分のサイレージほど高い傾向にあります。
(目標値 45%以下) |
酸性データジェント不溶蛋白質 ADICP(BP) % |
乳牛が利用できない蛋白質、刈り遅れた牧草やヒートダメージ、二次発酵や鎮圧不足によって高くなります。
(目標値 1.0以下) |
中性デタージェント不溶蛋白質 NDICP % |
NDF(繊維)に付着している蛋白質のことです、ゆっくりと消化される蛋白質です |
酸性デタージェント不溶リグニン ADL % |
リグニンのことです。リグニンは最も消化のしにくい部分で、牧草では刈り遅れるほど多くなり消化率を低下させます |
分析成分
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項目説明
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正味エネルギー ※1 NEL(3×) Mcal/kg |
乳牛の産乳、体の維持・増体に使われるエネルギー |
可消化養分総量 ※2 TDN(1×) % |
消化利用される養分 刈り取り時の生育ステージによって大きな影響を受けます
(目標61%以上) |
細胞内容物質 OCC % |
細胞の中に含まれる栄養分、試料として消化性、栄養価の高い部分 |
細胞壁物質 OCW %
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飼料中の繊維の総量で、消化性の低い部分 |
高消化性繊維 Oa % |
繊維中の消化されやすい部分(目標値15%以上) |
低消化性繊維 Ob % |
繊維中の消化されづらい部分(目標値45%以下) |
酸性デタージェント繊維 ADF % |
胃液で消化される繊維(リグニンは不消化)
(目標値38%以下) |
中性デタージェント繊維 NDF % |
飼料中の総繊維 (目標値60%以下) |
非繊維性炭水化物 NFC % |
第1胃内の微生物が利用するエネルギーで、刈り遅れると少なくなります
計算式100-(NDF-NDICP)-CP-EE-Cashで求めます |
デンプン STA % |
とうもろこしの熟期や雌穂重によって変わります |
粗脂肪 EE % |
植物に含まれる植物性脂肪 |
分析成分
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項目説明
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カルシウム Ca % |
(0.25%以上) |
りん P % |
(0.2%以上) |
マグネシウム Mg % |
(0.15%以上) |
カリウム K % |
(2.5%以上は要注意) |
当量比 |
(2.2以下が適正) |
有効蛋白質 AP % |
粗蛋白質の中で、乳牛が体内で吸収・利用可能な蛋白質 |
粗灰分 Cash % |
ミネラル、微量要素の総和
土壌などの異物が混入すると高くなります |
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イ 選択分析1
分析成分
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項目説明
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乳酸 Lac % |
pHを下げて不良発酵を抑えます |
酢酸 Ace % |
好気性の細菌が糖を分解して作る有機酸 (少ない方が良い) |
酪酸 But % |
高水分等で乳酸菌の働きが不十分な場合に、酪酸菌が増殖して糖や乳酸を分解して作られる有機酸(無い方がよい) |
アンモニア態窒素/全窒素 NH3-N/TN % |
酪酸菌がアミノ酸を分解して作られます (6.0%以下が望ましい) |
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ウ 選択分析2
分析成分
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項目説明
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硝酸態窒素 NO3-N % |
飼料中の硝酸態窒素濃度があるレベル以上なると硝酸中毒を起こしますので注意してください |
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エ 選択分析3
分析成分
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項目説明
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ナトリウム Na % |
唾液の成分で酸塩基平衡調節にも重要です |
塩素 Cl % |
浸透圧の調節に使われ、胃液成分でもあります |
イオウ S % |
微生物タンパクを合成する上で重要で、酸塩基平衡にも使われます |
※硝酸態窒素については「15 硝酸態窒素は大丈夫ですか」を参照して下さい
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(4)TDN(1×)の表示の意味
「TDN」とは、家畜が消化できる養分のことで、エネルギーの事です。TDNは各分析値からの推定式で算出されています。
また、TDNの後に(1×)という数字が付いています。この値は、乳牛が体を維持するために必要な量のエサを食べた時の消化試験から導かれた事を意味しています。
実際には泌乳牛は牛乳生産も行っているので、維持量の2~4倍以上の量を食べると言われています。食べる量が変わると消化率も変わってきます。これを換算したのが右の表です。(2×)は維持量の2倍、(3×)は維持量の3倍を食べた場合のTDNの換算値です。
今後は、乳牛の摂取量や状態を見ながらTDNを加減していく必要も出てきます。
飼料設計に用いる場合は乳牛の変化を見ながら微調整するようにして下さい。 |
報告書
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換算値
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TDN1×
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TDN2×
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TDN3×
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54.0
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54.6
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55.2
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55.0
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55.4
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55.8
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56.0
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56.2
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56.4
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57.0
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57.0
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57.1
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58.0
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57.9
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57.7
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59.0
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58.7
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58.4
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60.0
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59.5
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59.0
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61.0
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60.3
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59.6
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62.0
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61.1
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60.3
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63.0
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62.0
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60.9
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64.0
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62.8
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61.6
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65.0
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63.6
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62.2
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66.0
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64.4
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62.8
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図1 飼料中の成分構成
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