平成18年度 グラスランド2 家畜ふん尿を有効に活用しよう

 

 p00.gif    平成18年営農改善資料
    発行:北根室地区農業改良協議会
    編集:根室農業改良普及センター北根室支所

 

〔家畜ふん尿の特性と活用〕

 
1 家畜ふん尿を有効に活用しよう
 

家畜ふん尿は適量施用により養分供給と土壌改良の効果があり、経営上のメリットがあります。しかし、過剰に施用すると牧草の倒伏、マメ科の減少、牧草中の硝酸塩の集積やミネラルバランスの不均衡、周辺の環境汚染を招くなどの悪影響があります。
 ふん尿を適正に処理、利用するためにはそれらの性質を十分理解する必要があります。
(1) 乳牛のふん尿排泄量
 乳牛のふん尿排泄量は飼料の給与量、牛の大きさ等によりかなり変動します。経産牛では、1日1頭当たり約64kg程度の排泄量となっています(表1)。
 例えば、経産牛60頭、育成牛40頭の飼養農家では、年間約1,700tのふん尿が排泄されることになります。 この時、草地を60ha所有している場合、約1,700tのふん尿は10a当たり約2.9t(排泄量ベース)草地に還元することができます。
表1 乳牛のふん尿排泄量

区 分
    ふん尿の発生量
      (kg/頭/日)
 ふん   尿  合計
搾乳牛(2産以降)  51.4  13.0  64.4
搾乳牛(初   産)  35.8  13.8  49.6
育   成   牛  17.9   6.7  24.6
  平成16年 道立農試・畜試
  家畜ふん尿処理・利用の手引き2004
(2) ふん尿の施用効果
 
  1. 土壌構造・化学性の改善
     ふん尿施用により土壌有機物含量が増加し、団粒構造の形成促進、緩衝能の向上、保肥力の増加などの改善が図られます。
  2. 養分の供給
     ふん尿中には多量要素である窒素、リン酸、カリ、苦土、石灰の他、微量要素も含まれており、作物に対し総合的な養分供給源となります。施用されたふん尿中の養分により、化学肥料を減肥することができます。
  3. 土壌微生物活性の向上
     ふん尿の施用により微生物が増殖し、土壌養分の分解・利用を促進します。 

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図1 家畜ふん尿の施用効果

(3) 過剰施用の影響
  1. 牧 草 の 倒 伏
     窒素施用量が過剰になり牧草が倒伏します。倒伏した牧草は地際の葉部が腐敗し、栄養価と サイレージの発酵品質が低下します。
  2. マ メ 科 率 の 低 下
     過剰な窒素施用はイネ科の生育を助長し、逆に根粒菌の活性を下げ、マメ科牧草の永続性を低下させます。
  3. 牧草中硝酸態窒素含量の増加 (図2左)
     ふん尿を多量施用すると、土壌中の窒素濃度が高まり牧草中の硝酸態窒素濃度が高くなり ます。 特に、尿、スラリーの過剰施用時に蓄積され易くなります。
  4. 牧草中カリウム含量の増加、ミネラルバランスの悪化
     家畜ふん尿中にはカリウムの含量が特に高いため牧草のカリウム含量が高まり、拮抗作用によりカルシウムやマグネシウムの吸収が抑制されます。(図2右)
     このため、ミネラルバランスが崩れ、乳牛に対する障害の危険性が高くなります。
  5. 土壌や周辺環境の汚染
     ふん尿を一度に多量に施用した場合、土壌への集積、地下水への移行、周辺環境の汚染等が懸念されます。
     
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 ※堆肥は早春に施用(平成11年、根釧農試)
図2 堆肥の施用量と牧草(チモシー)養分含量(乾物中%)

(4) 牧草地に散布した堆肥の収穫時混入
 牧草収穫時にサイレージへの堆肥混入は酪酸含量を増加させ、発酵品質が低下します。(図3)
 草地上の堆肥の塊は、パスチャーハロー等により砕き散らすことで収穫時の混入を低減できます。

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堆肥添加量は乾物重比(平成11年、新得畜試)

図3 堆肥混入と牧草サイレージの発酵品質

 

 

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