平成18年度 グラスランド2 肥効率と種々の肥効要因

 

 p00.gif    平成18年営農改善資料
    発行:北根室地区農業改良協議会
    編集:根室農業改良普及センター北根室支所

 

〔家畜ふん尿の特性と活用〕 

 7 肥効率と種々の肥効要因 

(1) 肥効率の考え方とその要因

肥効率とは、ふん尿に含まれる養分のうち牧草に吸収・利用される割合をいいます。
 施用したふん尿の成分は、多くの要因によって変動します。
 肥効率に影響する要因は、養分の種類(窒素、リン酸、カリ)、施用時期、ふん尿の水分、アンモニア態窒素の含有率などが大きな影響を与えます。

 ふん尿に含まれる養分の肥効要因は、次のように整理できます。 

1.基 準 肥 効 率 (A) 〔表7参照〕
 ふん尿の形態別(堆肥、スラリー、尿)、肥料養分別(窒素、リン酸、カリ)に設定。

2.施用時期による窒素の補正係数 (B) 〔表8参照〕
 窒素のみ。ふん尿を散布した時期別に肥効率を設定。

3.堆肥水分による窒素の補正係数 (C) 〔表9参照
 堆肥の窒素のみ。堆肥は水分変動が大きく、水分が高いほど肥効が高い。

4.アンモニア態窒素の含有率による窒素の補正係数 (D) 〔表10参照〕
 液状ふん尿の窒素のみ。アンモニア態窒素の含有率が高いほど肥効が高い。
        (液状ふん尿=スラリー、分離液、尿)

 このため、分析値に上の肥効率及び補正係数を乗ずることによって、ふん尿から牧草へ供給される肥料養分量を求めます。

 ○堆肥から牧草に供給される肥料養分量
   ・窒 素=分析値×(A)×(B)×(C)
   ・リン酸=分析値×(A)
   ・カリ=分析値×(A)
  *(B)と(C)は窒素のみ

 ○液状ふん尿から牧草に供給される肥料養分量
   
・窒 素=分析値×(A)×(B)×(D)
   ・リン酸=分析値×(A)
   ・カリ=分析値×(A)
  *スラリー、分離液、尿に適用。(B)と(D)は窒素のみ
(2) 基準肥効率
窒素の肥効率はふん尿の形態により大きく異なり、液状の形態ほど高くなります。
堆肥は、肥効が緩効性なため施肥当年から次年度の肥効も期待されます。

 

表7 草地に施用した家畜ふん尿の基準肥効率

 

 

基準肥効率 

窒素 

リン酸 

カリ 

当年 

2年目 

当年 

2年目 

当年 

2年目 

堆肥 

 0.2 

0.1 

0.2

0.1 

0.7 

0.1 

スラリー 

0.4 

 0.4

0.8 

- 

尿 

0.8 

- 

0.8 

 1) ふん尿中の肥料養分含量に当係数を乗ずることにより、化学肥料に換算する。
 2) 施用時期による補正は、別途定める補正係数を用いる。
  なお、最終番草利用後の施用における当年とは施用翌年を指す。
 3) 品質の大きく異なるふん尿については、別途定める補正係数により補正する。
 4) 家畜ふん尿処理・利用の手引き 2004

 

(3) 施用時期による窒素の補正係数
  同じ肥料成分の家畜ふん尿でも施用時期によって、窒素肥効は変化します。この施肥時期による肥効の差を係数化したものが表8です。
 チモシーを基幹とする採草地において、施用時期による肥効の違いを補正するために4月から5月上旬の施用を「1」として、それぞれの施用時期によって窒素肥効率を補正します。
 
表8 ふん尿の施用時期による窒素の補正係数
施 用 時 期 堆 肥 スラリー・尿
9月上旬~10月下旬 1.0 0.8
4~5月上旬 1.0 1.0
5月中旬 0.8 0.8
1番草収穫後 0.5 0.9

 1)チモシーを基幹とする採草地を対象とする
 2)9-5月の補正係数では年間施用量に、1番草収穫後では2番草に対する施肥量に換算するための肥効率を算出する。
 3)施用当年のみを補正の対象とする。
 4)家畜ふん尿処理・利用の手引き 2004

 

(4) 堆肥の水分量による窒素の補正係数 
 堆肥は水分率により、肥効率が大きく異なります。水分が高いほど速効性で肥効が高くなります。
 水分が低い堆肥が肥効率が低いのは緩効的でもあり、腐熟が進み窒素含量が低下している傾向にあるためです。
 水分65~80%の場合の肥効率を「1」として表9の補正係数が設定されています。

表9 堆肥の水分による窒素の補正係数
区分  水分(%)  補正係数 
 肥効大  80~

 1.4

 肥効中  65~80

 1.0

 肥効小   ~65

 0.7

 1) 施用当年のみを補正の対象とする。
 2) 家畜ふん尿処理・利用の手引き 2004

 

 
(5) アンモニア態窒素の含有率による窒素の補正係数

 液状のふん尿は、作物が速効的に吸収できるアンモニア態窒素を多く含んでいるため、この含有率に肥効は大きく影響されます。(表10)
 アンモニア態窒素の含有率が多いふん尿ほど、牧草の吸収利用が高まります。
 しかし、吸収・利用率が高いだけに分析を実施し、適正な施肥を実施しなければ種々の弊害が発生します。

 

 表10 アンモニア態窒素の含有率による窒素の補正係数
区分  NH4-N%  補正係数 
肥効大 

 3.5 ~ 

 1.2

肥効中   1.5~3.5

 1.0

肥効小    ~1.5

 0.8


 1) 施用当年のみを補正の対象とする。
 2) スラリー乾物中のアンモニア態窒素%(NH4-N%)
 3) 家畜ふん尿処理・利用の手引き 2004

 

 

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