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平成18年営農改善資料 |
発行:北根室地区農業改良協議会
編集:根室農業改良普及センター北根室支所 |
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草地は、牧草収量が経年的に安定していれば、それだけ良質粗飼料確保の計画が容易になります。
しかし、造成段階で優良品種を播種した草地も、経年化が進むにつれて植生が悪化し、収量、栄養含有率の低下が見られます。
そこで、合理的な施肥技術を駆使することによって、植生を維持しながら長期に渡って高生産を維持しましょう。 |
1 北根室管内の現状
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(1) 土壌の現状
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平成16年度の維持草地の土壌分析結果から、北根室管内の土壌の傾向を見てみると、次のようになります。(図1)
維持草地土壌(地表から5cm深)において、カリは61.0%の草地が過剰傾向にあります。リン酸と苦土は、約30%の草地が不足していますが、逆に約50%が、基準値以上であることから、施肥時には増肥、減肥を行い、合理的な施肥を行うことが望ましいでしょう。 |
図1 平成16年度 土壌分析結果
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(2) 草種の現状
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中標津町の草地更新時における播種組み合わせをみますと、平成13年から17年までの5年間を通じて、チモシーの中生混播型が半分以上を占めています。(表1)
10年前までは、チモシーの早生混播型が主流でしたが、数年前からチモシーの中生型が増えてきています。
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表1 更新時の播種組合せ
種子型 |
播種実績の推移(%) |
平成13年 |
平成14年 |
平成15年 |
平成16年 |
平成17年 |
早生型 |
26.6 |
45.9 |
49.1 |
30.8 |
31.8 |
中生型 |
71.2 |
49.9 |
48.3 |
66.4 |
64.3 |
晩生型 |
2.2 |
4.2 |
2.6 |
2.8 |
3.9 |
(普及センター調べ) |
管内で播種されるイネ科牧草は、チモシーが大部分で、採草利用タイプが多く、成熟期は極早生品種から晩生品種まで育成されています。
チモシー品種とマメ科牧草の具体的組合せは、次のようになります。(表2) |
表2 根釧地域におけるチモシー熟期別品種とマメ科品種の組合せ
熟 期 |
チモシー品種 |
アカクローバー品種 |
シロクローバー品種 |
早生品種 |
ノサップ、オーロラ |
ナツユウ、マキミドリ |
リベンデル、ソーニャ |
中生品種 |
キリタップ、ホクエイ |
クラノ |
ソーニャ、リベンデル |
晩生品種 |
ホクシュウ、シリウス |
- |
タホラ、フィア |
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図2に牧草収量の経年変化について示しました。
更新後2~3年で最も収量が多くなりますが、その後は徐々に減少しています。
これは、マメ科草の経年化に伴う衰退、レッドトップ、シバムギ等の地下茎型イネ科雑草の増加によるものです。
このような状況から、草種、播種型に合わせた施肥計画が必要となります。 |
図2 経年変化による収量推移例 (道農政部「牧草生産利用実態調査」)
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牧草収量は、主に草種構成によって決まります。そのため、施肥管理は草種構成に対応して変える必要があります。
そのためには、採草地の植生タイプ(混播牧草草地でのマメ科の割合)を的確に把握する必要があります。(表3)
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表3 採草地の草種構成による区分
植生
区分 |
特 徴
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1
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チモシー・アカクローバー・シロクローバー混播草地
造成(更新)後の経過年数が2~3年の比較的新しい草地。
チモシー50%以上、マメ科率30%以上の草地。 |
2
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チモシー・シロクローバー30%以下の混播草地
アカクローバーは衰退しているが、チモシー50%以上、シロクローバーが1 5~30%を占めている草地。雑草の侵入は少ない。 |
3
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チモシー・シロクローバー10%以下の混播草地
チモシーが50%以上、シロクローバーが5~15%、ケンタッキーブルーグラス、レッドトップ、シバムギ等の地下茎型牧草及び雑草の一部が侵入している草地。 |
4
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チモシー単一的草地
チモシーが70%以上、マメ科率は5%以下。地下茎型牧草、雑草の侵入は比較的少ない草地。 |
5
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不良植生草地
ケンタッキーやレッドトップ等の不良イネ科牧草やフキ、ギシギシ、シバムギなどの雑草の侵入が著しい草地。 |
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(3) 家畜ふん尿施肥の現状 |
家畜ふん尿は、土壌物理性の改善や肥料効果が期待できます。また、干ばつ、低温等に対する抵抗力を増すなど、総合的な緩衝作用が期待できるので、有効に活用することが大切です。
家畜ふん尿を維持草地に現物1トン施用した時の、牧草に供給される成分量を次に示します。(表4)
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表4 維持段階に堆肥、スラリー、牛尿により
牧草に供給される成分量 (Kg/現物1t)
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N |
P2O5 |
K2O |
当年 |
2年目 |
当年 |
当年 |
堆 肥 |
1 |
0.5 |
1 |
3 |
スラリー |
2 |
- |
0.5 |
4 |
牛 尿 |
5 |
- |
0 |
11 |
(平成元年 土壌診断に基づく施肥対応:根釧農試) |
表5 現行施肥標準から見た堆肥、スラリーの適正施用 (kg/10a)
※
植生
区分 |
標 準 施 肥 量 |
堆肥
施肥量(t)
|
堆肥からの供給量 |
スラリー
施肥量(t) |
スラリーからの供給量 |
N |
P2O5 |
K2O |
N |
P2O5 |
K2O |
N |
P2O5 |
K2O |
1 |
4 |
10 |
18 |
4 |
※4 |
4 |
12 |
2 |
4 |
1.00 |
8 |
2 |
6 |
10 |
18 |
6 |
6 |
6 |
18 |
3 |
6 |
1.50 |
12 |
3 |
10 |
8 |
18 |
6 |
6 |
6 |
18 |
4.5 |
9 |
2.25 |
18 |
4 |
16 |
8 |
18 |
6 |
6 |
6 |
18 |
4.5 |
9 |
2.25 |
18 |
※ 植生区分は表3を参照
※ 黄地は、必要な養分が堆肥・スラリーだけで満たされている部分。 |
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表5では、家畜ふん尿より牧草に供給される量を基に、現在の施肥標準からみた適正な施用量を検討しました。スラリーを例にあげると、マメ科率30%以上の植生区分1の草地には、年間10a当たり2tを施用すると、これらの草地に必要な窒素は、すべてスラリーで供給されることになります。 |