平成18年度 グラスランド2 維持草地の施肥 土壌分析値の活用

 

 p00.gif    平成18年営農改善資料
    発行:北根室地区農業改良協議会
    編集:根室農業改良普及センター北根室支所

 

〔維持草地の施肥〕 

2 土壌分析値の活用 

 草地土壌の特色は、牧草が永年作物であることに由来します。
 つまり、水稲や畑作物が「耕起→施肥・播種→収穫」というサイクルが1年ごとに完結するのに、草地は「施肥→収穫→(越冬)」を繰り返して、更新しない限り耕起されません。
 このように草地土壌の経年化によって、表層部分が大きく変化するため、牧草の生育が抑制されます。

 

(1) 経年的な変化
○地力窒素の減少   ○根の表層集中   ○有機物の表層蓄積
○土壌の酸性化     ○土壌の緊密化   ○植生の悪化 
(2) 土壌分析の意義

 土壌分析は、この経年的変化を測定することも目的のひとつです。つまり、土壌中に含まれている養分の量を測定して、どういう施肥をすれば良質な牧草が沢山とれるようになるか、対策をたてることです。

 

(3) 土壌分析と施肥設計 

 

ア 草地土壌の施肥標準

 
 表6 北海道施肥標準
   チモシー草地 (kg/10a、年間)
マメ科率に
よる区分
泥  炭  土 火  山  性  土
目標収量 目標収量
1 4,500

5,000
2 10 22 4,500

5,000
4 10 18
2 4 10 22 6 10 18
3 8 8 22 10 8 18
4 14 8 22 16 8 18
                 (平成14年9月 北海道施肥ガイド抜粋)
(留意事項)
1 チモシー草地とは、チモシーとマメ科が混播されている草地及びチモシー単一草地をいう。
2 マメ科率による区分は次表の通りとする。マメ科率は1番草の生草重量割合(%)を想定している。
3 年間2回利用を前提とする。そのときの施肥配分は早春:1番草刈取後=2:1とする。
4 施肥時期は、早春ではチモシーの萌芽期ごろ、1番草刈取後ではチモシーの独立再成長始期
 (刈取後5~10日前後)が適当である。
5 マメ科率による区分3では、マメ科の回復を図る場合にはマメ科による区分の2のN施肥量に準ずる。
6 苦土の年間施用量は、泥炭土と火山性土についてMgOとして4kg/10aとする。
7 炭カルの年間追肥量(pH5.5~6.0草地)は、40kg/10aとする。
マメ科率
による区分
    マメ科率 チモシー率
1 30 %以上 50%以上
2 15~30 %未満 50%以上
3 5~15 %未満 50%以上
4 5 %未満 70%以上

イ 草地土壌の診断基準

 

  表7  草地土壌診断基準


分 

 診断基準

 診断項目

 基準値(100g中)

 火山性土

 低地土・台地土

 泥炭土




 




cm


 pH(H2O)

 5.5~6.5

 5.5~6.5

 5.5~6.5

 有効態リン酸
    (P2O5)

未熟      30~60mg
黒色        20~50mg
厚層黒色   10~30mg

20~50mg 

30mg以上 

 置換性石灰
     (CaO)
未熟     150~300mg
黒色     200~400mg
厚層黒色  300~500mg 

200~450mg 

400~800mg 

 置換性苦土
    (MgO)

20~30mg 

10~20mg 

30~50mg 

 置換性カリ
    (K2O)

未熟      7~ 9mg
黒色       9~12mg
厚層黒色  10~13mg 

 15~20mg

30~50mg 

 石灰・苦土比
    (Ca/Mg)

5~10 

5~10 

5~10 

 苦土・カリ比
    (Mg/K)

2以上 

2以上 

2以上 

 
表8 土壌診断に基づく施肥対応
土壌区分 有効態リン酸(mg/100g) 交換性カリ
(mg/100g)
交換性苦土(mg/100g)
基準値 基準値
以  下
基準値
以 上
基準値 基準値
以 下
基準値以上 基準値 基準値
以 下
基準値
以 上
50~70 71以上
未熟
火山性土
 30~60 150% 50% カリ施肥量=
22-0.5×仮比重×交換性カリ含量
 20~30 150% 50%
黒色
火山性土
 20~50 150% 50%
厚層黒色
火山性土
 10~30 150% 50%
泥炭土
(無客土)
    ―    ―    ― 30~50 125% 75% 50%  30~50 150% 50%
泥炭土
(客土)
    ―    ―    ― 30~50 110% 75% 0

 

  土壌分析結果からの各成分の値を、土壌診断に伴う施肥対応と比較します。(表8)
リン酸の基準値は、黒色火山性土を例に取りますと、20mg~50mg/100gの間であれば、施肥標準どおり10アール当たり10kg施用します。これを超える場合は10a当たり5kgに減肥が可能となります。基準値以下の場合は、15kgの増肥によって、牧草のリン酸含有率が上昇したり、収量が増える可能性があります。
 同様にカリ、苦土(マグネシウム)も増肥、減肥が可能となります。
 ここで、重要なことは減肥をする場合には「3年に1度土壌診断をする」ことです。
 それが出来ない場合には、施肥標準量に戻す必要があります。
 尚、各成分の減肥可能年限は、リン酸でほぼ3年、カリでは1年です。苦土の場合も同様に3年とします。
 
 3 植生区分別の施肥設計例
 表9は、植生区分別の施肥設計例です。施肥量の増加に伴う増収効果は、草地の草種構成によって異なり、施肥量が同じならマメ科率の高いほど増収になります。
 従って、目標収量を10アール当たり4.5tとした場合でも、必要な年間の窒素施肥量は植生タイプによって大きく違います。
 
表9 採草地施肥設計例  (火山性土)
植生
タイプ
目標収量
kg/10a
施肥標準量(Kg/10a) 施   肥   設   計   例
PO KO 施肥
時期
肥料の
種類
N% P2O5% K2O% MgO% 施用量
(kg/10a)
PO KO MgO
1 5,000 4 10 18 早春 採草5号 8 15 27 5 45 3.60 6.75 12.15 2.25
追肥 採草5号 8 15 27 5 20 1.60 3.00 5.40 1.00
  合  計 Kg/10a 65 5.20 9.75 17.55 3.25
2 4,500 6 10 18 早春 採草6号 10 14 26 5 50 5.00 7.00 13.00 2.50
追肥 採草6号 10 14 26 5 20 2.00 2.80 5.20 1.00
  合  計 Kg/10a 70 7.00 9.80 18.20 3.50
3 4,000 10 8 18 早春 採草4号 17 10 22 4 50 8.50 5.00 11.00 2.00
追肥 採草6号 10 14 26 4 25 2.50 3.50 6.50 1.00
  合  計 Kg/10a 75 11.00 8.50 17.50 3.00
4 4,000 16 8 18 早春 565 15 6 15 3 75 11.25 4.50 11.25 2.25
追肥 採草4号 17 10 22 4 30 5.10 3.00 6.60 1.20
  合  計 Kg/10a 105 16.35 7.50 17.85 3.45
 *植生タイプは、前ページの表3の植生区分を参照
 マメ科率が低くなると伴に、窒素肥料を多く必要とします。また、植生の違う草地に同じ施肥方法をとっていたのでは、収量の増加は期待できません。
 
4 石灰施用の重要性

 

○草地の経年化に伴い、徐々に土壌が酸性化します。これは肥料に含まれるアニオン(硫酸イオンなど)の作用で、土壌中の石灰を流亡させるため、土壌のpHが低下(酸性化)するからです。
土壌が酸性化すると、有害なアルミニウムが溶出して、牧草のリン酸吸収を阻害し、生産を抑制します。
これらの影響を受けて、マメ科の消失、株数の減少、雑草の侵入が起こり植生が変化します。

○石灰施用の効果は、酸性化した土壌を矯正することによって、アルミニウムの溶出を防止し、 微生物活性を活発にし、土壌中のカルシウム濃度が増加し、牧草中のリン、カルシウム含有率が増加する。さらに有機物の分解を促進し、最終的に牧草収量を増加させます。

○牧草の中でも、マメ科草は石灰を大量に吸収するため、マメ科牧草維持には石灰の施用が不可欠です。
pHの低下は、土壌により反応が異なるため、土壌診断でpHを測定しながら炭カル等を施用します。

 

 

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