平成18年度 グラスランド2 草種の特徴と種子組み合わせ 草種の特性

 

 p00.gif    平成18年営農改善資料
    発行:北根室地区農業改良協議会
    編集:根室農業改良普及センター北根室支所

 

〔草種の特徴と種子組み合わせ〕

 

 1 草種の特性 
 近年、良好な草地を維持するため種々の現地試験を経て新しい品種が開発されています。草種や品種の特性を知ることは、牧草の栽培上でも乳牛の飼料として利用する上でも重要です。ここでは主要草種について品種の特性について紹介します。 

 

(1) チモシー(TY)の特性

 チモシーは道内で最も利用されている草種で、牧草種子量の75%以上を占めています。当地区でもイネ科牧草のほとんどをチモシーが占めています。

  • 冬枯れに極めて強く、冷涼な天候でも旺盛な生育を示す。
  • 1番草の収量が多く、家畜の嗜好性が高く、刈り遅れにともなう嗜好性の低下は他の草種に比較し少ない。
  • 刈り取り後の再生が遅く、干ばつや高温に弱い。
  • 秋の生産性が低い等から他の草種との競合に劣り、利用や管理を誤ると永続性が低下するので混播組合せに注意する。
  • カルシウム、マグネシウム等のミネラル含量が低い短所もある。
表1 チモシー優良品種の特性
品種名 品種決定年 利用 早晩性 主な特性
クンプウ 昭55年 採草 極早生 草型は直立。草丈はやや低い。葉身はやや長。 茎は太い。耐病性は強。再生は良好
ノサップ 昭52年 採草 早生 草型は直立。茎はやや太。葉身はやや長。
多葉性、再生は良好。耐病性は強。多収。
ホクセイ 平6年 採草 早生 再生は良好。耐病性、耐倒伏性は比較的強。
多収。
オーロラ 平6年 採草 早生 初期生育、再生は良好。耐病性は比較的強。
耐倒伏性は強。多収。
ホライズン 平14年 採草 早生 1番草の耐倒伏性がやや優れる。やや多収。
特に2番草が多収。
アッケシ 平4年 兼用 中生 草型は直立型。茎は細く、茎数は多い。耐寒性は強い。斑点病に強い。倒伏にやや弱い。多収。
キリタップ 平4年 兼用 中生 着葉角度が狭い直立型。茎は細く、茎数は多い。斑点病、倒伏に比較的強い。耐寒性は強。多収。
ホクエイ 平7年 採草 中生 2番草の再生はやや良好。すじ葉枯病にやや弱い。多収で特に2番草が多収。
ホクシュウ 昭52年 兼用 晩生 草型はほふく型。出穂期における草丈は「センポク」を上回る。黒さび病に強く、斑点病、すじ葉枯病に抵抗あり、再生は良好。多収。
北見22号 平16年 兼用 晩生 草型はややほふく型。耐倒伏性及び斑点病抵抗性に優れる。耐寒性は強。茎はやや太い。多収
シリウス 平14年 採草 晩生 斑点病抵抗性と混播適正がやや優れる。
(2) オーチャードグラス(OG)の特性 
  • 多年生で、草丈が比較的高い寒地型牧草。
  • 出穂期は5月下旬から6月上旬でチモシーより早い。
  • 分げつは多く利用後の再生力が旺盛。
  • 根系は広く分布するためチモシーより干ばつに強い。
  • 耐湿性はチモシーより劣る。
  • 耐寒性は「中」で、越冬条件によっては冬枯れに見舞われることもある。
  • 刈り遅れによって家畜の嗜好性が低下する。
 
表2 オーチャードグラス優良品種の特性
品種名 品種決定年 利用 早晩性 主な特性
ワセミドリ 昭62年 採草放牧 直立型。穂数はキタミドリよりやや少。すじ葉枯病、うどんこ病に強。越冬性強。やや多収。
キタミドリ 昭44年 採草放牧 穂数多く直立型。茎の太さ、葉幅、葉身長は中程度。耐病性は中。耐寒性、雪腐菌核病に強。
フロンティア 昭47年 採草放牧 直立型。葉身、葉幅は大。茎は太い。すじ葉枯病に強。雲形病抵抗性は中程度。越冬性は中
ハルジマン 平13年 採草放牧 中の晩 草型はややほふく型。越冬性は「オカミドリ」と同程度。春の草勢は良。雪腐大粒菌核病抵抗性は強。耐寒性は中からやや弱。 収量性は「オカミドリ」と同程度かやや優れ、特に1番草の収量は多収。耐病性はやや強。耐倒伏性は強。
ケイ 昭53年 放牧 やや晩 穂数多く直立型。葉身、葉幅、茎の太さ大。雪腐大粒・少粒菌核病に極強。越冬性強。収量やや低。
オカミドリ 昭51年 採草 やや晩 草型は直立。草丈はやや高い。葉長、葉幅は大型。葉部割合は比較的大。耐病性は強。越冬性は強。
グローラス 平5年 採草放牧 越冬性強。 土壌凍結・寡雪地帯での冬枯れ多発年に適
バッカス 平14年 採草 直立型。草丈やや高い。すじ葉枯病や黒さび病は「オカミドリ」より優れる。多収。
ヘイキング 昭46年 採草 葉色はやや淡緑。 葉枯性病害抵抗性はやや強。越冬性は強。
トヨミドリ 平6年 採草 放牧 極晩 直立型。草丈高く茎数少ない。すじ葉枯病、黒さび病、雲形病は「オカミドリ」より強。 越冬性、永続性良。
ヘイキング2 昭62年 採草 極晩 草丈は長。穂数は「オカミドリ」より少。すじ葉枯病、黒さび病に強。越冬性は強。 収量は「オカミドリ」よりやや多収。
(3) メドウフェスク(MF)の特性
  •  収量性はチモシー、オーチャードグラスに比較するとやや低い。
  • 再生は良好で季節生産性に優れている。
  • 家畜の嗜好性もオーチャードグラスより良好。
  • 放牧用草種として優れた特性を持っている。
  • 出穂期はオーチャードグラスとチモシーの中間に位置する。
 
表3 メドウフェスクの品種特性
品種名 品種決定年 利用 早晩性 主な特性
トモサカエ 昭63年 採草
放牧
越冬性・混播適正良。網班病強。多収。
リグロ 平6年 採草
放牧
越冬勢は良。網班病は「トモサカエ」よりやや弱。多収。
ハルサカエ 平11年 採草
放牧
越冬性・混播適正良。収量・耐倒伏性は「トモサカエ」よりやや優れる。
プラデール 平14年 放牧 夏及び秋の収量が「ハルチカラ」より多収。
バンディ 昭56年 採草
放牧
やや晩 耐病性はやや弱。越冬性は道東で劣る
 (4) ペレニアルライグラス(PR)の特性
  •  耐寒性が弱く、大粒菌核病に弱い。
  • 草丈50~60cmの下繁草で、伸長した葉幅は狭く、表面に光沢がある。
  • 放牧用草種で、短草利用での家畜の嗜好性が良好。
  • 再生力、秋の生産性、耐蹄傷性に優れている。
  • 北根室地区では放牧用草種として利用すると季節生産性が平準化する。
 
表4 ペレニアルライグラス優良品種の特性
品種名 品種決定年 利用 早晩性 主な特性
フレンド 昭53年 放牧 草型中間型。冠さび病に強い。越冬性やや良。4倍体品種。
ポコロ 平11年 放牧採草 収量性、永続性、混播適正に優れる。秋と春の生育が良好で、早春からの利用が可能となる。
(5)アカクローバ(RC)の特性
  • 北海道ではマメ科牧草の需要数量の約55%を占める最も重要な採草型マメ科草種。
  • 当地区では、チモシーとの混播で特性が発揮される。
  • 粗蛋白質やミネラル含量が高く、また乾物消化率も優れており、イネ科牧草との混播利用で栄養価と収量の両面で生産性の向上が期待される。
  • 冷涼でやや湿潤な気候を好み、耐寒性は強い。
  • 短年性のため生存年限は概して短く、3~4年目には減収傾向を示す。
 
表5 アカクローバ優良品種の特性
品種名 品種決定年 利用 早晩性 主な特性
ハヤキタ 昭54年 採草 4倍体。草姿の巨大性は顕著でない。葉斑はやや不鮮明。倒伏少。耐病性強。越冬性良好。
タイセツ 平2年 採草 4倍体。端大きく葉斑鮮明。耐病性強。黒葉枯病にやや弱。再生良好。永続性に優れ、多収。
ホクセキ 平2年 採草 越冬性並、耐寒性やや強。葉斑鮮明。 耐病性やや強。永続性優れやや多収。
マキミドリ 平5年 採草 越冬性やや良。うどんこ病、菌核病、茎割病抵抗性強。多収。
メルビィ 平2年 採草 越冬性、早春の草勢は良好。うどんこ病、モザイク病に強いが、茎割病に弱い。多収で永続性に優れる。
ナツユウ 平13年 採草 混播適正と越冬性に優れ、うどんこ病、菌核病に強いが、黒葉枯病にはやや弱い。既存の早生品種の中では競合力が小さく、チモシーとの混播に有利。
クラノ 平10年 採草 葉は大きい。耐病性はやや強く、越冬性は並。収量性はやや低いがチモシー中生品種との混播適正に優れる。

 

 (6) シロクローバ(WC)の特性
  • 生存年限の長いマメ科牧草で北海道から九州までの広い範囲で栽培が可能。
  • シロクローバの茎は地面に接して伸びるランナーで、各節から葉あるいは頭花と根を生じる。
    *ランナーは次々に枝分かれして放射状に 伸び裸地を埋めながら増殖する。
  • 栽培条件では、冷涼湿潤な気候条件に最も適するが、高温・乾燥にも耐え、適応性も広い。
  • イネ科牧草に比べて粗蛋白質やミネラル含量が高いため、イネ科牧草と混播することによって収量や飼料価値の向上が図れる。
  • イネ科牧草と混播して用いるが、大葉型、中葉型、小葉型でイネ科牧草との競合力が異なるので使い分けが必要。
 
大葉型
(ラジノ型)
特徴は、種子をのぞく各器官のサイズが他の2群に比べて最も大きく、ランナーや葉の密度は低いが、葉、葉身、葉柄とも巨大で多収
カリフォルニアラジノ、ルナメイ
中葉型(コモン型) 大葉型と小葉型の中間的なタイプで、放牧適応性が優れている。 ソーニァ、ラモーナ、フィア、マキバシロ
小葉型
(ワイルド型)
草丈が低く、ランナーは細かい分枝が多く、葉は密生して小さく、 放牧利用で混播適正が優れている。
リベンデル、タホラ
 

大葉型(ラジノ型):

 p20-7.jpg
 ←特徴は、種子を除く各器官のサイズが他の2群
 に比べて最も大きく、ランナーや葉の密度は低
 いが葉、葉身、葉柄とも巨大で多収

 

中葉型(コモン型):

 p20-8.jpg
←大葉型と小葉型の中間的なタイプ
 で、放牧適応性が優れている
 
 
小葉型(ワイルド型):

p20-9.jpg

 ←草丈が低く、ランナーは細かいが分枝が多く、
 葉は密生して小さく、放牧利用で混播適性が
 優れている
 
表6 シロクローバ優良品種の特性
品種名 品種決定年 利用 早晩性 主な特性
カリフォルニアラジノ 昭46年 採草放牧 大葉型 頭花数多く、ほふく茎の密度高い。 季節生産性に優れる。収量やや低。
ルナメイ 平8年 採草放牧 大葉型 越冬性、混播適正良。ほふく茎の密度高。
ソーニャ 昭63年 採草放牧 中葉型 ほふく茎の密度高い。混播適正良。多収。
ラモーナ 平8年 兼用 中葉型 ほふく茎の密度が高い。多収。混播適正良。
フィア 昭46年 放牧 中葉型 耐病性は強。再生力は強。
マキバシロ 平3年 放牧 中葉型 混播適正、永続性、放牧適正に優れる。
リベンデル 平8年 放牧 小葉型 ほふく茎の密度高い。チモシーとの混播適正良。チモシーとの混播で利用。
タホラ 平8年 放牧 小葉型 ほふく茎の密度高い。チモシーとの混播適正良。チモシーとの混播で利用。
  チモシーとの競合力から、ソーニャ、リベンデル、タホラが奨励されています。 
 

(7) アルファルファ(AL)の特性

  •  酸性土壌には不適で、マメ科牧草の中では採草利用に適した草種。
  • 太く長い根を持ち、干ばつに対して強く、湿害に弱い。
  • 粗蛋白質、ミネラル含量が高く飼料価値が高い。
  • 大型機械や牛等による踏圧に弱い。
表7 アルファルファ北海道奨励品種及び準奨励品種の特性

品種名

品種決定年

利用

早晩性

主な特性

マキワカバ 平6年 採草 極早 草型やや直立型。耐倒伏性、耐病性強。多雪地帯で特に多収。
ヒサワカバ 平6年 採草 草型やや直立型。耐干性、耐倒伏性、耐病性強。小雪地帯で特に多収。
 

 

 

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