根室農業改良普及センター営農技術情報 令和5年3月

 スラリーの早春散布は、肥効や粗飼料品質への影響から草丈が20cmを超えない時期(5月10日前後)までに行うことが望ましいです。自分の農場ではいつから散布すれば5月10日までに散布しきれるか逆算し、計画的に散布しましょう。

1 スラリーの散布時期と窒素の肥効

 スラリーは、散布する時期によって窒素分の肥効が大きく変わります(表1)。チモシー草地の場合、5月中旬以降に散布したときは、5月上旬に散布したときと比べて窒素分が20%無駄になります。

表1 散布時期による補正係数
散布時期補正係数
4月~5月上旬1.0
5月中旬0.8

※ふん尿の分析結果に乗じて使用する係数

2 スラリーの散布時期と粗飼料品質

 スラリーの散布が遅れた場合、スラリーが牧草に付着し粗飼料品質や嗜好性を低下させる恐れがあります。散布から収穫まで50日以上空けることで、そのリスクを抑えることができます。

 普及センターで散布時期が粗飼料成分に与える影響を調査したところ、水分含有率は5月中旬区の方が高く、WSC(糖)含有率は5月上旬区の方が高くなりました(図1)。収穫牧草はスラリー散布が遅れることで乾きにくくなる傾向にあり、水分含有率は74%以下だと発酵品質が安定しやすくなります。また糖含有率は早く散布するほど高くなることが伺えます。WSCは乳酸発酵に欠かせず、最低でも6%、10%以上あることが望ましいとされています。

図スラリー散布時期と粗飼料成分

図1 散布時期による粗飼料成分の違い

 これらの結果から、早い時期にスラリーを散布する方が、サイレージの発酵品質が高まることが示唆されます。特に、乳酸菌を利用してサイレージを調製する場合、早春のスラリー散布が遅れないよう注意します。

3 スラリー散布を始める時期

 過去7年間の作況調査データ(5月15日)は表2の通りです。多くの地点で草丈が20cmを超えているため、気温が上がりやすい平野部では、5月10日前後までに散布を終了させる工夫が必要です。

 また、土壌凍結中のスラリー散布は環境汚染に繋がります。普及センターHPに土壌凍結調査データが掲載されています。自分の地域が土壌凍結していないことを確認して散布を始めます。

表2 5月15日の牧草草丈(cm) H28~R4平年値(調査:根室振興局)
別海根室中標津
標津計根別
平年24.417.521.321.725.7

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