スラリーの早春散布は、肥効や粗飼料品質への影響から草丈が20cmを超えない時期(5月10日前後)までに行うことが望ましいです。自分の農場ではいつから散布すれば5月10日までに散布しきれるか逆算し、計画的に散布しましょう。
1 スラリーの散布時期と窒素の肥効
スラリーは、散布する時期によって窒素分の肥効が大きく変わります(表1)。チモシー草地の場合、5月中旬以降に散布したときは、5月上旬に散布したときと比べて窒素分が20%無駄になります。
散布時期 | 補正係数 |
---|---|
4月~5月上旬 | 1.0 |
5月中旬 | 0.8 |
※ふん尿の分析結果に乗じて使用する係数
2 スラリーの散布時期と粗飼料品質
スラリーの散布が遅れた場合、スラリーが牧草に付着し粗飼料品質や嗜好性を低下させる恐れがあります。散布から収穫まで50日以上空けることで、そのリスクを抑えることができます。
普及センターで散布時期が粗飼料成分に与える影響を調査したところ、水分含有率は5月中旬区の方が高く、WSC(糖)含有率は5月上旬区の方が高くなりました(図1)。収穫牧草はスラリー散布が遅れることで乾きにくくなる傾向にあり、水分含有率は74%以下だと発酵品質が安定しやすくなります。また糖含有率は早く散布するほど高くなることが伺えます。WSCは乳酸発酵に欠かせず、最低でも6%、10%以上あることが望ましいとされています。
図1 散布時期による粗飼料成分の違い
これらの結果から、早い時期にスラリーを散布する方が、サイレージの発酵品質が高まることが示唆されます。特に、乳酸菌を利用してサイレージを調製する場合、早春のスラリー散布が遅れないよう注意します。
3 スラリー散布を始める時期
過去7年間の作況調査データ(5月15日)は表2の通りです。多くの地点で草丈が20cmを超えているため、気温が上がりやすい平野部では、5月10日前後までに散布を終了させる工夫が必要です。
また、土壌凍結中のスラリー散布は環境汚染に繋がります。普及センターHPに土壌凍結調査データが掲載されています。自分の地域が土壌凍結していないことを確認して散布を始めます。
別海 | 根室 | 中標津 | 標津 | 計根別 | |
---|---|---|---|---|---|
平年 | 24.4 | 17.5 | 21.3 | 21.7 | 25.7 |