最優秀賞
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【タイトル】サーシャ
【応募者】阿部 夕希子
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】北方四島のひとつ国後島に住むロシア人少年サーシャが、島の歴史や厳しい現状に悩みながら成長していく姿を描いています。領土問題を日本側からではなく、現ロシア人島民側からの視点で描いた斬新な作品。
【講評】現在、北方四島に住んでいるロシア人島民の視点にたって創作された作品で、かつて北方領土の島を追われた日本人元島民の心情をせつなくつづった昨年度の最優秀作品「ばあちゃんのしべとろ」と”対極”をなすものといえる。北方四島が日本固有の領土であることの歴史的事実を踏まえながら、淡々とした中にもドラマチックに展開する文章には無駄がない。また、サンドペーパーに丁寧に描かれた独特の技法による絵の完成度も高く、読み手に考えるものや期待を持たせ、余韻が残る力作といえよう。 |
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優秀賞
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【タイトル】エトピリカのぼうけん
【応募者】親子読書会エトピリカ(応募代表者:岡村 砂枝子)
【作者】(絵・文:親子読書会エトピリカ)
【あらすじ】根室半島の近くにあるユルリ・モユルリ島に住むエトピリカのピリカちゃんを探して、3羽の仲良しエトピリカたちが北方四島へ飛び立ちます。四島を巡るエトピリカの冒険物語。
【講評】何よりも、取り組みがすばらしいと思う。親子6組がそれぞれに絵と文を展開した「創作リレー作品」であるが安定感のあるほのぼのとした作品となった。合作は全体の調和などがかなり難しいと思われるが、全体にうまくまとまっている。絵は子供らしい大胆な構図で、文も場面展開に注意が払われており、共同制作の見本のような作品。
無邪気で朗らかな作品で好感を得た。テーマ性や作品の厚みについては、最優秀作品に及ばず。将来が楽しみ。 |
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佳作
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【タイトル】おばあちゃんの島は楽園だった
【応募者】島田 規江
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】前半は、おばあちゃんが生まれ育った島での生活や苦難を極めた引き揚げ時のこと、後半は人道支援や日ロ外交交渉、返還運動まで幅広いテーマに展開する中から、北方領土問題を訴える作品。
【講評】かつての色丹島の様子や歴史的背景、引き揚げ時の樺太での収容所の様子など詳細に描かれており、北方領土問題がよくわかる内容でまとめられている。絵はほのぼのとしてあたたかさを感じる表現で、とても丁寧に描かれている。魅力的なイラストと物語文も力作で、応募に際しての大きな北方領土学習を感じるが、詰め込み過ぎてしまった。 |
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【タイトル】貝殻の約束小さなクロ
【応募者】島田 規江
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】元島民のおじいちゃんと「ビザなし交流」に参加し色丹島を訪れた少年が、貝殻から飛び出した光の力で、ロシア人少年のニコライとともに不思議な体験をします。ひとつの貝殻を通じて2人の少年が友好を深める物語。
【講評】無理のない語り口で「ビザなし交流」の現状にのっとり、ファンタスティックな要素も取り入れて展開する物語は、北方領土問題を今後どうしていけばいいかを考えるきっかけになる絵本。文はわかりやすくまとめられており、絵も明るくとても丁寧に描かれていて素朴な印象を受ける。しかし、結末に至るまでがやや単調で、タイトル「貝殻の約束」の表出が希薄だった。 |
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※ 絵本コンクールの全応募作品はこちら(PDF:58KB) |