最優秀賞
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【タイトル】「自然の楽園」-北方四島のいきものたち-
【応募者】佐藤 正人
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】春の訪れから冬の厳しさまで、自然の宝庫である北方四島の四季を追って、テン、ラッコ、エトピリカなど、四島に生きるいきものたちの姿を描いている。ページを開くたびに、美しい画面に季節ごとの主人公(いきものたち)が登場し、やさしく読者に語りかける。
【講評】見る側をひきつける圧倒的な絵の迫力と美しさ、そしてダイナミックな構成が興味を引く。“いきものたち”の表情が素晴らしい。ひと言も「領土問題」や「望郷」、「返還」を語らず、いきものたちの楽園・美しい自然としての「北方四島」の普遍的な存在をにじませ、そこから「北方領土」への思考を導いていく。また、四島のかけがえのない自然環境が破壊されず残されていくことを願う気持ちと、領土問題が平和に解決し、返還されることへの希望を、いきものを通してうまく表現している。ただ、最後の場面で作者のメッセージが子供たちに伝わりにくいのではないかという一部懸念の声もあった。 |
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優秀賞
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【タイトル】ユミとパソコン
【応募者】河口 えみか
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】北海道の小学校に、ビザなし交流で国後島からターニャという少女が訪れることになった。楽しそうに迎える準備をしている同級生とは対照的に、その輪に入ることができなかったユミも、先生の機転で、得意のパソコンを使い、その輪に溶け込んでいく。結局、ターニャは病気で来られなくなったが、ユミは自らメールを送ることを提案し、ターニャとの交流が始まる。
【講評】小学校3年生の女の子を主人公にした、総合学習や調べ学習での一場面を切り抜いたかのようなまさしく今を生きるストーリーである。パソコン、携帯電話という青少年の“必需品”をうまく利用しながら、素直な子どもの心の変化を描いており、同世代の子供たちが共感し、親しみを持つことができる。ただ、ややストーリーが長すぎるのと、読後に作品への共感・同意のみが強く残り、奥深い感動や印象が残らず、この交流の姿で安心、満足してしまう嫌いがある。 |
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佳作
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【タイトル】ぼくらはみんなしっている
【応募者】島田 規江
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】幼い兄妹が北方領土のパズルで遊ぶことを通して、四島に関心を持つ。父親に北方領土の面積や歴史を教えてもらい、子供なりに領土問題について考える。
絵本の中に出てくるパズルの一部が切り抜かれている、仕掛け絵本。
【講評】「北方領土」をパズルにして語っていく発想は素晴らしく、北方領土の位置や大きさを簡単に知ることができ、幼児・小学校低学年向けとしてわかりやすくできている。四島との友好を描いた部分も、子供たちに理解しやすく、工夫が感じられる。
展開と結末も簡潔でわかりやすいが、もう少し言葉と絵にふくらみが欲しかった。絵が平面的。 |
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【タイトル】海の歌
【応募者】池田 茉澄
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】「海」は少女が島で歌う歌が大好きで毎日聞いていた。「海」はその歌が大地にも届くことを望んでいた。ある日、その歌が聞こえなくなり心配したが、大地から聞こえてきた少女の歌を聞いて島と大地の交流を知る。しばらくして島と大地の両方で平和を願う歌が聞こえるようになった。
【講評】独創的な絵で、一場面一場面の豊かな表現が印象的。色合いも素晴らしく文章と響きあっていて、独特な世界に引き込まれる。文字形もレイアウトも計算されている。抽象的な絵と文は、読み込んでいくと北方領土に対するイメージや深い祈りと願いが伝わってくる。ただ、抽象的イメージ作品で、子供には理解が難しいように思われる。 |
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【タイトル】赤いくちばし黄色いくちばし
【応募者】本多 桂子
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】赤いくちばしの鳥達の住む島で、見たことのない黄色いくちばしの鳥と出会う。その鳥は以前、島から追い出されてしまった鳥の子孫だった。2羽の鳥達は、歌と踊りをお互いに教え合い交流を深め、これをきっかけに島には両方の色のくちばしの鳥が住むようになり、オレンジのくちばしの鳥が生まれた。
【講評】政府と政府ではなく、住民同士、人間同士の未来を示唆していることが、モチーフとして新しい。表情も豊かで、子供から大人まで見る側に親しみを与え、わかりやすい表現が印象的である。「赤いくちばしの鳥と黄色いくちばしの鳥」をそれぞれ「ロシア人と日本人」に例えた寓話は平易でわかりやすい一方、「赤いくちばし、黄色いくちばし」という表記が文章中に何度も出くるので、読む側としては読みづらく、その部分を文ではなく絵で伝えられれば良かった。 |
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【タイトル】おじいちゃんのふるさと
【応募者】箕輪 クミ
【作者】(絵・文:応募者と同じ)
【あらすじ】北見に住む少年が、根室に住む祖父を訪れ、択捉島に住んでいた時の祖父の写真を見つけ尋ねたが、祖父は答えなかった。後日、母親から祖父が島を一方的に追い出された時のくやしさ、故郷を想う気持ちを聞く。それをきっかけに、もっと北方領土のことを知り、多くの人に伝えていくことが、今自分にできることだと考えるようになる。
【講評】元島民の寂しさと孫が未来に希望を託している様子が簡潔な文に表現されており、北方領土問題を解決するために、今、何をしなければならないのかがきちんと説明されている。絵は、誰が見てもわかりやすく、見やすい表現できっちりと丁寧に描かれており、文章と良く合っている。ただ、ストーリーとしては単純すぎ、細かい場面設定にムリやムラがある。もう少し構想を深めて物語を展開して欲しかった。 |
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※ 絵本コンクールの全応募作品はこちら(PDF:115KB) |