根室農業改良普及センター技術情報 カーフハッチって何なんだ?!

「カーフハッチ」って何なんだ?!

 (平成20年11月)

 「そんなこと知ってるよ。子牛を一頭ずつ飼う小さな小屋でしょ」と思った方、カーフハッチは単なる小屋ではないのです。
 その特性をよく知れば、子牛にとっていかに理想的な環境をつくることができるか納得いくはずです。
 かといって利点ばかり!というわけでもありません。
 欠点も含めたカーフハッチの特性を知り、我が家で導入するかどうか、ご家族と検討してみてはいかがでしょうか。

 1. 子牛の特徴と必要な飼養環境

 子牛の特徴は次の通りです。

  1. 病原菌に対する抵抗力が弱い
  2. 寒さに弱い
  3. 汚れた空気に弱い

    ですから、子牛が元気に育つためには以下の環境が必要です。
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とってもデリケートなの・・・
 
 清潔で乾いている
  • 掃除しやすい
  • 乾きやすい
  • 日光が当たる 
 暖かい
  • 熱が逃げにくい
  • 暖まりやすい
  • 乾いている
  • 日光が当たる
  • 風が直接身体に当たらない
  • 冷たい壁や床がそばにない
 空気が新鮮
  • 換気しやすい 

 

2. カーフハッチの特性って?~利点編~

(1) 動かすことができる →病原菌の発生場所から移動できる、乾燥させられる、好きな方向に向けられる

  カーフハッチは他の施設のように地面に固定していません。
 ですから病原菌が発生した場合、汚染された土壌からハッチを他の場所に移すことで、次に入る子牛への伝染を防ぐことができます。

 
 また「乾燥」はもっとも有効な消毒方法の一つです。
 次の子牛を入れる前に、ハッチを置く地面やハッチ内部を日光に当てて乾かすことができます。
 風向きや日射の方向などにより、好きな方向に向きを変えることも容易にできます。 
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人力で運ぶには、2~3人必要です。

トラクターで運べるようにフックを付けておくと便利です。 

(2) 空気は新鮮で、意外と暖かい! *すきま風がなく、乾いた敷き料をたっぷり入れた状態
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冬の寒さから子牛を守るには

  • 日光の暖かさを活用
  • 身体に直接風を当てない(すきま風にも注意)
  • 囲まれた場所で自分の熱を逃がさない
  • 冷たい壁から熱を奪われないように
  • 乾いた敷き料をたっぷり入れる(地面からも熱を奪われないように)
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 ア 空間が小さい →換気しやすい、暖まりやすい、熱が逃げにくい
  基本的に外に置くため、空気は新鮮です。また、空間が小さく構造も単純なため、空気の入れ換えが必要な場合も簡単に換気できます。
 外に置くので寒いと思われがちですが、空間が小さく天井が低いため、親牛舎にいる場合と比べ、体熱や日光などで暖められた暖かい空気は逃げにくくなります。 
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親牛の後ろの空気は、糞尿からの
アンモニアなどがたっぷり・・・

 
 

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親牛舎の中は天井が高く、意外と寒いものです。 
隅っこにあるパンは空気のよどむ場所でもあります。

 舎内のペンの場合、冬季は板やシート
などで天井をつくってやります。

 
 イ 材質は木またはFRP(プラスチック) →壁が冷たくなりにくい

  カーフハッチの材質は、木またはFRP(プラスチック)が一般的です。
 これらはコンクリートや鉄などと比べると熱伝導率が低く、冷たくなりにくいという特徴があります(皆さんも経験から分かると思いますが)。

*それでも寒い厳冬期には、壁にコンパネ(木の板)やスタイロフォームなどを断熱材として貼ってやることで、寒さ対策ができます。

 (3) 子牛が自分で環境を選べる
 雨や風の日、日差しの強いときは奥側へ、ポカポカ暖まりたいときは陽の当たる場所へ等、子牛が自分にあった環境を選ぶことができます。(右写真) hacchi09.jpg 
 
 日の当たる場所
 外の空気を吸える場所
 
日のあたらない場所 
 
風が当たらない場所 
 

 などなど・・・

(4) 1頭ずつ飼う →病気のまん延を防ぐ、子牛の変化に気づきやすい
 1頭ずつ飼うことで、子牛の変化に気づきやすくなります。
 また、病気が他の子牛へと伝染するのを防ぎます。
 *ペンで飼う場合も同じです。(建物の中で1頭ずつ空間を区切って飼う方法)
 
3.カーフハッチの特性 ~欠点(になりやすい)編~ 
 カーフハッチは子牛にとても良い環境を作りやすい反面、管理する人間にとっては次のような欠点もあります。
(1) 外にある →雨・雪・風の日など作業が大変 →観察時間が減りやすい 
 子牛の病気は、どれだけ早く状態の変化を見つけられたかどうかで、重症にならずに済むか、あるいは死んでしまうか・・・という違いが出てきます。
 観察時間が減ることは、子牛の変化に気付くのが遅れるということにつながります。 
(2) 掃除がしにくい →汚れやすい →雑菌の繁殖、子牛の体が濡れる、ハッチ内の空気も汚れる 
 

「狭い」
「子牛が入ったまま」
「柵がはずしにくい」・・・など、
ハッチには掃除しにくいという一面があります。

面倒なために掃除する回数が減ってしまい、環境や子牛自体が汚れてしまっては、カーフハッチで飼う利点がjなくなってしまいます。

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掃除がなかなか出来ず、
子牛のあしもとは
ドロドロです・・・。
これでは、雑菌の繁殖はもちろん、
子牛の体も濡れてしまい
体温がどんどん奪われていきます

 
カーフハッチを導入する場合は、これらの欠点を理解した上で、子牛にとっての最良の環境を維持できるようにしましょう。 
 
 
 4.事例紹介
 根室市のY牧場では、子牛の下痢や肺炎が多発していました。
 子牛を失うだけでなく、治療などに掛かる手間もかなりのものだったため、一念発起した奥さん(経営主の妻)の提案により、カーフハッチの導入に踏み切りました。 
 

導入から半年、Yさんの感想は・・・

  • 子牛の調子は良い。  下痢もほとんどない。
  • なにより子牛が幸せそう!
  • 掃除は1日1回、糞尿で汚れたところだけを取り除き、新しい敷き料を足してやる。この方法だと、そんなに手間は掛からない。
  • 掃除は日課にしてしまえば大変ではない。子牛の様子もこまめに見ることができる。
  • エサ台も作ったので、水とスターターをちゃんとやれるようになった。
  • 1人で管理するならカーフハッチ5台くらいがちょうど良いかもしれない。

  *ちなみに、Yさんはかなりこまめな管理をしています。

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乾いた敷き料たっぷり
敷き料は子牛の毛布。
寒い時期は特にたくさん入れてやりましょう。 

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 換気口を開けて常に新鮮な空気を!

*厳冬期でも日中の暖かい時間などに1日1~2回は換気口を開け、空気の入れ換えをしてやりましょう。

5.カーフハッチを導入するなら・・・ 
  まず、置き場所を考えなければなりません。
 1.2m×2.4mくらいのカーフハッチを何台並べ、作業性を考えると間隔は1mくらいずつ開けて・・・など、必要面積を計算します。
 場所は牛舎と自宅のあいだなど、普段から目に付くところに設置した方がよいでしょう。
「そんな場所ウチにはないなぁ」と思われるかもしれませんが、意外と普段見慣れてしまってい気付かないだけで、雑品置き場になっているスペースなどあるかもしれませんね。
 
 hacchi15.jpg 処理室の入口を出た向かいに、
使わないラウンダーなどを置いて
あるスペースがありました。

 ↓

 hacchi16.jpg  雑草処理をして、土盛りしました。
(排水性を良くするため、一段高く
します)

 

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景観も良くなり、とても素敵な
スペースになりました。 

 

 〔参考〕

カーフハッチで子牛の疾病対策を(製作編)

ちょっとひと工夫~カーフハッチをスノコで快適に!~

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