根室農業改良普及センター営農技術情報 令和1年10月

FFAについてご存じですか?

 FFAとは、Free Fatty Acid=遊離脂肪酸の略で生乳中の脂肪分解の程度を表し、脂肪分解が進むとランシッドという異常風味の原因となります。北海道の平均的なFFA値は、0.7~0.8であり、FFA値が2.0を超えると風味異常を感じるケースが増加し、最悪の場合バルク乳廃棄となるため注意が必要です。

 平成30年から集乳旬報にFFAの表記が始まっています。この機会に自農場のFFA値を確認し、今後の対策について検討しませんか。

1.ランシッド臭(脂肪分解臭)の原因は?

 

(1)搾乳機器による影響 

  バルク乳の過攪拌や凍結、泡立ち(写真1)などは、物理的な衝撃となって脂肪を包む脂肪球膜を破壊します。すると脂肪分解酵素(リパーゼ)の作用を受けやすくなり、脂肪分解が起こるため、ランシッド臭を生じます。

 

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写真1  レシーバージャー内での生乳の泡立ち

 

 

(2)飼料給与による影響 

  極端なエネルギー不足や濃厚飼料の多給・固め食いなどによるルーメン内pHの低下は、脂肪分解酵素

(リパーゼ)の働きを活発にし、脂肪分解を促進させるため、ランシッド臭の原因となります。

 

(3)頻回搾乳による影響

 

  搾乳ロボットにおける極端な頻回搾乳は、前回の搾乳により乳腺上皮細胞の膜が壊されたままとなり

ます。すると脂肪球膜のもろい脂肪球となるため脂肪分解が促され、ランシッド臭を生じます。

 

 

2.高FFA値の改善事例

 

 

(1)A農場  粗飼料事例 

 ・発生経過

  1番草バンカーの切り替え時期にコーンサイレージの給与が切れ、そのまま飼料給与を続けた結果、FFA値が上

 ・原因

  コーンサイレージの給与停止および品質の悪い粗飼料の給与によるエネルギー不足

 ・対策

  コーンサイレージの給与再開と栄養充足のための給与メニュー見直し

 

(2)B農場  ロボット搾乳事例  

 ・発生経過

  搾乳許可の出る搾乳間隔が短く、期待乳量が低いトレーニング牛(ロボット搾乳に慣れていない初産

牛など)用の設定で泌乳後期まで搾乳を続け、牛群のFFA値が上昇

 ・原因

  トレーニング牛の設定のままでの搾乳による過搾乳

 ・対策

  搾乳許可の設定を通常のモードに変更

 

3.ランシッド臭(脂肪分解臭)予防のポイント 

(1)搾乳機器の点検

  ミルカーやミルキングシステムの定期点検・メンテナンスを行い、動作不良によるエアー漏れやバル

ク乳の過攪拌がないかどうか確認しましょう。

 

(2)健康なルーメン発酵

  粗飼料不足や品質の悪い粗飼料の給与とならないよう、良質粗飼料を十分に給与するとともに、適切

な量の濃厚飼料を給与し、しっかりと食い込ませましょう。

 

(3)搾乳回数の適正化 

  搾乳ロボットでの搾乳間隔の短縮や1回の搾乳量の減少により、FFAが増加することがあります。過

度な頻回訪問や頻回搾乳となる設定は避けましょう。

 

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写真2  良質粗飼料を1日4回に分け、十分に給与している農場

 

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