根室農業改良普及センター営農技術情報 令和2年2月

後継牛確保のための繁殖戦略について

  近年の生乳価格と個体販売価格の高騰により、所得は増加しているものと推定されます。しかし、今後の価格がどのように推移するかは不透明な状況です。この状況下においても、後継牛を十分に確保することはとても大切なことです。特に施設投資により規模拡大を図った農場では、経営改善計画とおりの増頭を確実に実践する必要があります。そこで今回は、後継牛を計画的に確保するための繁殖戦略を一緒に考えてみます。

 

1.目的に沿った交配計画を!

  根室管内では雌雄判別精液(以下、判別精液)や和牛精液の利用が増加しています(表1)。また、受精卵移植技術(以下、ET)が向上するなど新しい技術を経営内に取り入れている農場も増えています。各精液や技術の特徴は表2のとおりです。

  目標とする頭数を確保するためには、闇雲に判別精液や和牛精液・受精卵を使用するのでなく、戦略的に増殖計画を立てて適正頭数を確保する必要があります。例えば、規模拡大中であれば既存の施設で増頭分を管理できるか、預託を利用するかを考える必要があります(写真1)。また、和牛精液を活用する場合、和牛精液を付けすぎてしまい後継牛が残らないということも実際に起こっています。 

 

表1  根室管内での判別精液利用と和牛交配の状況(根室生産連より)

0202graph01.jpg

 

表2  各精液・技術の特徴

0202graph02.jpg

 

0202photo01.jpg

写真1  旧牛舎をほ育施設に改造し保有頭数を拡大

 

2.管内の活用事例について

 

  管内で判別精液と和牛精液を有効に活用している事例を紹介します(図1)。各農場を比較しやすくするために、頭数規模と分娩間隔は同じ条件に統一しています。

  管内の現況は、判別精液利用率と和牛交配率(H28年)を用いて、ホルスタイン種の雌と雄、F1、ET幼牛の頭数を算出しました。

  規模拡大タイプでは、頭数に必要な後継牛を判別精液を活用し確保しやすくしています。農場内で管理できない育成牛は町営育成牧場に預けています。

  個体販売有利タイプでは、通常精液と判別精液、和牛精液の3種類をうまく活用しています。経産牛には通常精液と判別精液を使い、初産牛に判別精液と和牛精液を使い、雌子牛を確保しつつ、F1・ET幼牛を生産し個体販売で利益を上げています。

 

0202fig01.jpg

図1  根室管内の判別精液や和牛精液を活用した事例(経産牛100頭、分娩間隔400日の場合)

 

3.まとめ     

 

  経営の方針に基づいた精液や授精方法の選択によって、搾乳牛の適正頭数を確保することが重要です。

  繁殖戦略を考えると、牛群に残す牛をどこで決めるかが肝要になってきます。受胎が遅れた牛を長く農場に残した場合、過肥や周産期のトラブルにつながり、増頭・更新計画に支障が出てしまいます。農場内で必要なホルスタイン種雌子牛の頭数を把握した上で、適時淘汰を行いましょう。

 

根室農業改良普及センターのTOPページへ
 営農技術情報の目次へ

 

 

カテゴリー

根室農業改良普及センターのカテゴリ

cc-by

page top