酪農経営における和牛のほ育管理について
近年、酪農経営における雌雄判別精液の活用により、計画的な交配が可能となりました。それに伴い、取引価格の高い黒毛和種(以下和牛)の精液や受精卵の利用が増加するなど、酪農経営における和牛の生産頭数が増えてきています。しかし、和牛子牛の事故率なども増加傾向にあります。今回は酪農経営における和牛の事故を減らすためのポイントについて考えてみます。
1 和牛の子牛は弱い!!
表1に和牛と乳牛の子牛の主な違いを示しました。同じ飼養環境下の場合、乳牛の子牛では耐えられても、和牛の子牛は耐えられないことがあります。また、午前中元気であっても、午後にはぐったりしていることもあり、こまめな観察、徹底した衛生管理、温度管理(特に冬期間)が重要になります。
2 子牛の免疫力を高めるために
和牛の初乳は乳牛(ホルスタイン種)と比べ、免疫グロブリン濃度(IgG1)が高く、子牛の免疫獲得に与える効果が高いです(表2)。初乳は母牛から得られたものが好ましいのですが、自然ほ乳で母牛からのほ乳量が少ない場合は、良質なホルスタイン種の冷凍初乳や初乳製剤を追加給与します。また、母牛が育児放棄をして初乳を飲ませることができないときや、ET産子で人工ほ乳を行う場合は、ホルスタイン母牛の良質な初乳や初乳製剤を出生後6時間以内に給与しましょう。飲みが悪い場合は無理矢理飲ませず、遅くとも出生後12時間以内に数回に分けて与え、しっかり免疫移行を促しましょう。
写真1 十分なほ乳を行いましょう!
また、分娩予定日の半月前に、母牛に下痢5種ワクチン(不活化)を摂取したり(初産牛や初めての牛には分娩予定日の1ヶ月半前と半月前の2回)、栄養を充足(特にタンパク質)させることで、免疫を効果的に移行させることができ、病気にかかりにくい丈夫な子牛を生産することが期待できます。
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