乾乳期は過密を避けよう
周産期疾病を防ぐためには、乾乳期に十分な飼養スペースが必要です。そのガイドラインと農場事例をご紹介します。
1 過密は採食量を低下させる
乾乳牛にとって飼槽と休息スペースにおける過密は、生理現象以上の食い込み量(採食量)の低下を招きます。
乾乳期に食い込み量が低下すると、大きなストレスがかかり周産期疾病の要因となります。
過密を解消することは、食い込み量を増加させ、周産期疾病のリスクを減少させることにつながります。
2 休息スペースに注意を!
飼槽での競合が高まると、食い込み量の低下やいわゆる負け牛が発生し易くなります。負け牛は、飼槽での採食時間が減少するため濃厚飼料の採食量が偏ったり早食いが起きたりします。
飼槽幅は全頭が並べるように、1頭あたり72cm以上確保しましょう。
また、1頭に必要な最低限の休息スペースは表1の通りです。
表1 推奨される乾乳牛の密度
(出典:酪農試験場,「乳牛の周産期管理マニュアル」,2019年)
3 事例から見た乾乳期管理のポイント
別海町A牧場の事例を紹介します。
改善前:フリーバーン(10間×6間(194㎡))に乾乳前・後期牛を飼養していました。多いときには、25頭飼養されており、1頭当たりの休息スペースは約8㎡と過密でした。そのため、食い込み量が低下し、第四胃変位が年間12頭ほど発生していました。
改善後:乾乳前期牛用のフリーバーン(11間×6間の214㎡)を新設しました(12,000千円)。それにより、既存の乾乳舎を乾乳後期牛用とし、乾乳前・後期牛を別牛舎で飼養できるようにしました。その結果、過密が解消され食い込み量が増加しました。現在、第四胃変位の発症牛は年間1頭ほどに減少しています。
休息・飲水スペースの拡大
乾乳前期牛舎の面積は214㎡、飼養頭数15頭で1頭当たりの休息スペースは、14㎡と十分なスペースが確保されています(写真1)。
写真1 広く清潔な乾乳舎
乾乳後期牛舎の面積は、194㎡、飼養頭数10頭で1頭当たりの休息スペースは、19㎡確保されています。
また、飲水スペースも広く、清潔に保たれているため十分な飲水量が確保できています(写真2)。
写真2 清潔な水槽
採食量向上
十分な飼槽幅と休息スペースを確保したことにより、採食量が向上しルーメンの膨満度は高くなりました。
4 最後に
周産期のトラブルが気になる時には、乾乳牛の飼養密度に着目してみてはいかがでしょうか。周産期のことで気になることがありましたら、普及センターにご相談ください。