根室農業改良普及センター営農技術情報 令和4年2月

効果的な初乳給与について

 子牛は初乳を飲むことで抗体を獲得し、病原体から身体を守ります。ほ育期の疾病は、その後の成長および生産性に大きく影響するため、初乳による抗体移行は子牛を健康に育てる上で重要です。

1 初乳の質

 初乳に含まれる免疫物質は、初乳の比重やBrix値の計測で判断することができます。子牛に給与する基準は、比重で1.056以上(温度20℃の条件下)、Brix値で22%以上です。

 初乳に含まれる免疫物質は、搾乳を重ねるごとに減少します(図1)。このことから、搾乳1回目の初乳を使用する必要があります。また、血乳やろう乳、体細胞が多いと判断される初乳は、衛生面や成分が不安定で給与に適しません。初産牛の初乳や搾乳量が8L以上の初乳は抗体濃度が低い可能性があります。その対策として、抗体濃度の高い凍結初乳や初乳製剤との併用をおすすめします(図2)。

図搾乳回数と初乳の比重

図1 搾乳回数と初乳の比重変化(n=1)(普及センター調べ,2013)

図給与の判断基準

図2 給与の判断基準

2 初乳の給与量

 子牛における抗体の摂取必要量は、免疫グロブリン(IgG)に換算して100g以上といわれています。これは、Brix値が約22%の初乳を2L以上飲ませる計算になります。初乳は、飲めば飲むほど抗体の移行量が増加するため、飲めるだけ飲ませることが丈夫な子牛を飼養するために重要です。これは、抗体濃度の低い初乳を与える上での対応策にもなります(図2)。

3 初乳給与までの時間

子牛が抗体を吸収できる能力は、出生後どんどん低下していき、およそ24時間後には抗体をほとんど吸収できなくなります(図3)。

図抗体吸収能力の変化

図3 抗体吸収能力の経時変化(出典:Dairy Science Update 2003 新生子牛に受動免疫を附与するテクノロジー)

 そのため、子牛の出生後、ほ乳欲を促す管理を実施し、できるだけ早く(生後6時間以内が理想)1回目の初乳を飲ませることが重要になります。そのための方法として、次の4点を紹介します。

(1)身体を敷料やタオルなどで拭いて水気を取る

子牛の身体が冷えるのを防ぎます。同時にお腹やお尻をマッサージするとほ乳欲の促進に繋がります。

(2)身体を温める

カーフウォーマーの使用や子牛を乾いた敷料が十分に入ったハッチもしくはペンに入れる方法などがあります。暖かいカーフウォーマーは、雑菌の繁殖を防ぐため毎回の洗浄が必要です。

(3)ニップルの変更

子牛が吸いやすいニップル(柔らかいもの、サイズの小さいもの)の活用をおすすめします。

(4)食道カテーテルの使用

(1)~(3)の対処をしても出生後12時間以内に初乳を飲まない場合は、子牛の抗体吸収能力がなくなる出生後24時間以内になるべく早く食道カテーテルを用いて初乳を給与する必要があります。

初乳の給与方法やほ育管理でお困りの方は、ぜひ普及センターまでご相談ください!

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