育成牛に給与する粗飼料品質
育成期に体高が伸び悩む農場をよく見かけます。育成前期(離乳後~6ヶ月)は急激に骨格が形成される時期なので、栄養の充足が発育向上に向けたポイントの1つになります。
1 育成前期で体高がバラつくことはありませんか?
根室管内の2戸の農場で乳用子牛を12ヶ月齢まで追跡して体格測定を行いました。その結果、どちらの農場も生後1ヶ月齢未満では、大きな差は見られませんでした。一方、4ヶ月齢時点での体高が低い農場は、12ヶ月齢時点でも体高が低いことが分かりました(図1)。
図1 ほ育牛の追跡発育調査結果(体高)
このように育成前期から発育の差が見られる主な要因として、
- 哺育期の下痢・肺炎に起因する栄養摂取量の低下
- 牛体の汚れ(濡れ)が引き起こす体温低下を補うための栄養不足
- 刈り遅れの粗飼料の給与や月齢に合わない群分けによる栄養不足状況の助長
などが挙げられます。
2 育成牛の栄養充足について
育成前期までは採食量が少なく、急激に成長するため、飼料中の栄養要求量は高めです(表1)。
CP | TDN | |
---|---|---|
3~6ヶ月齢 | 16 | 70~72 |
6ヶ月齢~授精まで | 14 | 68~70 |
ここで、配合飼料(CP18、TDN72 現物中%)と刈り遅れのチモシー(TY)乾草(CP8、TDN55 乾物中%)を利用した給与例を表2に示しました。その結果、CPの充足率は80~86%、TDNの充足率は90%と低くなります。
月齢 | 6 | 9 | 12 | |
給与量 (kg) |
配合飼料 | 2.5 | 2.5 | 2.5 |
TY乾草 | 3 | 4 | 5 | |
充足率 (%) |
CP | 80 | 86 | 83 |
TDN | 90 | 90 | 90 |
特に6ヶ月齢ではCPの充足率が低くなり、このことからも、育成前期には良質な粗飼料の給与が望ましいと考えられます。
3 良質な粗飼料を給与しよう!
刈り遅れの牧草は消化性が低く食い込めない場合があるため、注意が必要です。飼槽に牧草が多く残っていたり、牧草しかないのに牛が鼻でより分けながら採食している状態は「消化性が低く食べられない」ことのサインかもしれません(写真1)。
写真1 刈り遅れた牧草をよけて採食する様子
粗飼料を食い込ませるためには、①若い牛ほどなるべく牧草を切断して給与、②適期収穫した良質な牧草(2番草やルーサンヘイの併用などを含めて)の給与を検討しましょう。