根室農業改良普及センター営農技術情報 令和5年10月

フロストシーディング

 フロストシーディング(以下、FSと表記)とは、植物の発芽条件の「温度・酸素・水」のうち、温度条件が牧草の発芽に適さない霜(フロスト)が降りる時期には種(シーディング)を行い、翌春の融雪後に発芽させる方法です。

1 FS導入によるメリット

○11~12月の農閑期に行うことから、作業の分散と余裕をもったは種作業が実施できる。
○春播きに比べて、融雪水があることで土壌水分が十分確保されるため、干ばつによる発芽不良を回避できる。
○FSでは種した場合、雑草が発芽する前に牧草が冠部を被うため、雑草の少ない草地を作ることができる。
○6月下旬から7月にかけて1番草の収穫が可能であり、春更新と比べ、更新年の収量減少の緩和につながる。

2 FS導入条件

○は種時期:日平均気温6℃以下で、一時的昇温(日平均気温7℃以上が3日以上)が続かなくなる日。
 道東・根釧地域においては11月中旬から根雪始(概ね12月中旬)まで可能。
○は種する草種:草種はイネ科牧草を選ぶ。特にチモシーは種子が小さく比重が重いため、土壌に密着しやすく定着率も高い。
 マメ科牧草は発芽温度がイネ科牧草よりも低いため、種子が吸水し発芽してしまい枯死する可能性が高いことから適さない。
○は種量:通常のは種量より2~3割程度増量しては種する。
○施肥:融雪や降雨による肥料成分の流亡が起こるため、は種前は土壌改良材の施用、土壌の酸度矯正にとどめる。
  基肥は、翌春に窒素4~6kg/10aを目安に、発芽後ほ場が乾いたら施用する。
○は種後の鎮圧:完全更新の場合、は種後に鎮圧を行う。
  ただし、土壌が濡れているとローラーに種子が付着してしまうので、土壌表面が1~2㎝凍結した時に鎮圧を行うか、ゴムローラを使用する。
 凍結した土壌は浮き上がるため、春にも鎮圧を行う。
○ほ場の選定:保水性、排水性が良好なほ場を選定する。砂土系は避ける。平坦地が望ましい。

3 施工上の課題

○傾斜地に施工する場合は、エロージョン(表面流亡)を考慮して、鎮圧ローラーに重しを積載して加圧するか、作溝は種機では種を行う。
○降雪後は種も可能だが、降雪後のは種・鎮圧作業は、クローラトラクタを使用しないと施工が困難。

写真1 FSによる完全更新

 クローラトラクタ+ブロキャスによりは種。翌春、発芽を確認後、肥料散布に合わせてクローバを追播、定着させた。

写真2 FSによる追播

 フェストロリウムとペレニアルライグラス追播事例。翌年の草地では、追播した草種の伸長が確認された。

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