今年度の一番草が、想定よりも少ない収量だったり、成分バランスが悪かったりした場合は、施肥銘柄の再検討が必要です。今回はその手順を紹介します。
1 肥料の多過ぎ、少なすぎは草地に悪影響
3大栄養素(窒素、リン、カリウム)が多すぎたり、少なすぎたりすることは牧草の収量減少や品質低下につながります(表1)。また、必要量以上の施肥は経営を圧迫します。
適正量の施肥を行うためには、土壌分析が重要となります。
表1 栄養素の過不足により生じる障害の一例 |
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窒素 |
リン |
カリウム |
過剰 |
•倒伏
•牧草中糖含量の低下による発酵品質低下
•マメ科牧草の衰退
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•リン酸を好む雑草が増える可能性がある
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•乾乳後期の牛に給与しにくい飼料になる
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不足 |
•収量減少
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•収量減少
•生育停滞
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•収量減少
•マメ科牧草の衰退
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2 土壌分析値を活用する
農協や肥料メーカー各社に依頼することで、土壌分析ができます。「北海道施肥ガイド2020(QRコード)」を参考にし、分析したほ場の成分が基準値内にあるか確認します。
基準値を上回る、もしくは下回る値だった場合、減肥、増肥を行います。減肥、増肥の必要量は、土壌の種類やほ場の草種構成によって異なります。農協、肥料メーカー、普及センターにご相談ください。
北海道施肥ガイド2020
3 減肥、増肥の判断は土壌分析と粗飼料分析でダブルチェックを行う
根室管内で、土壌分析値のカリウムの値が高く、北海道施肥ガイド2020に基づきカリウムの減肥を行った結果、収量が減少した事例がありました。減肥を行う以前の粗飼料分析値を確認したところ、乾物中カリウム含量は基準値を下回っており、土壌分析値と異なる傾向を示していました。
以上の結果から、土壌分析値に加えて粗飼料分析(可能であれば原料草)を確認する事で、収量の減少や過剰施肥を未然に防ぐことができると考えられます。
粗飼料分析値の基準値は、表2を参考ください。
表2 作物栄養診断基準(採草地)抜粋 |
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診断項目 |
診断時期 |
基準値(乾物中) |
留意事項 |
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イネ科 |
マメ科 |
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窒素(N) |
収穫期 (地上部) |
2~3% |
3~5% |
年2回刈りのチモシーは1~2%、赤クローバは2.5~3.5% |
リン(P) |
0.2~0.4% |
0.2~0.5% |
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カリウム(K) |
1.7~3.5% |
1.7~3.5% |
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