根室農業改良普及センター営農技術情報 平成26年10月

 

 

根室農業改良普及センター営農技術情報   平成26年10月


 

高品質な初乳の給与を(初乳品質の確認法)
                                      (平成26年10月)

 

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初乳の役割を再考する

新生子牛が健康に育つために不可欠な初乳は、出生直後に必要とされる栄養素やホルモンを豊富に含んでいます。さらに、様々な病原体から子牛を守る物質(IgGをはじめとする免疫グロブリンなど)も含んでいます。
牛の胎盤は構造上、免疫グロブリンを通すことができないため、子牛は母牛の体内で免疫を獲得せずに生まれてきます。
従って、病原体から新生子牛を守るためには、良質な初乳が不可欠です。

 
初乳の品質を確認する
初乳中の免疫グロブリン含有量の評価には、以前から比重計が使われてきました。しかし、比重計はガラス製で衝撃に弱く、温度補正の必要もあり器具の洗浄にも手間がかかります。そのため、酪農家の間では初乳品質評価の必要性を理解しながらも、その利用は敬遠されていました。
一方、比重計と比べて衝撃に強く、操作が簡単で洗浄も楽なブリックス計を用いて、免疫グロブリンの濃度を推定する事例が見られるようになりました(図1)。
ブリックス値と比重の間には高い相関が見られることから、ブリックス値は比重に代わり免疫グロブリンの推定に利用可能であることが確認されています(図2)。
 

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図1  比重計とブリックス計

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図2  初乳の比重とブリックス値の関係

 
初乳の見た目と品質の関係
調査した初乳を比重順に並べてみましたが、色調が濃い黄色でいかにも「高品質な初乳」に見えても、基準を満たさない比重の初乳が散見されました。色調などの見た目では品質を評価することはできませんでした(図3)。

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図3   初乳の色調と比重の関係

 
初乳品質の判断基準について
ブリックス計による初乳の評価にあたっては、推奨基準を参考に品質を判断しましょう(表1)。

  表1   初乳ブリックス値の推奨基準

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初乳給与の注意点
初乳給与が遅れるほど、新生子牛の免疫吸収率は低下していきます(表2)。
 

表2   給与開始時間の差による免疫吸収量の違い

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初乳は分娩後6時間以内の給与を目標に、速やかに給与する必要があります。
ただし、難産で生まれた新生子牛等、なかなか初乳を飲まない事例も見受けられます。そのようなケースでは、羊水が胃内に貯留していたり、酸欠状態からの回復が遅れていることが考えられます。
なかなか初乳を飲まない子牛には、分娩直後の初乳給与を無理に行わず、6時間程度、時間を置いてから給与し直しましょう。また、免疫吸収率は次第に落ちますが、12時間以内ならば再度初乳給与にチャレンジしましょう。
初乳給与量は、必要とされる免疫グロブリンを満たすために、3リットル以上を目安にしましょう。 

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