乳製品加工は衛生的に!!~安全な乳製品を作るポイント~
1.新鮮な原料乳を使用しましょう
原料乳の乳質の良し悪しは、製造工程、製品の品質の両方に影響します。「生菌数や体細胞が少ない」といった衛生面はもちろんのこと、「牛乳本来のよい風味を有すること」といった数値に表すことのできない事項も、とても重要な要素となります。このため、乳質が良好であることはもちろんのこと、新鮮な原料乳を用いることが大切です。
①生菌数の影響
チーズの製造は、スターターとして添加した乳酸菌を急激に増殖させることで、他の菌の増殖を押さえ込んでしまうことに特徴があります。ですから、原料乳に含まれる細菌は極力少ないことが理想です。
もともと牛乳中に存在する細菌は、殺菌によってその多くが死滅しますが、すべての細菌が死滅するわけではありません。殺菌後においても他の細菌が多く残っている場合、異常発酵して熟成中にチーズが膨らんだり、病原菌が増殖することもあります。
よって、殺菌するからといって安心するのではなく、原料には細菌数の少ない良質な牛乳を利用して下さい。
②体細胞の影響
原料乳の体細胞が多いと、牛乳のpHが高くなり、乳タンパク質、乳糖・乳脂肪などが減少します。乳酸の生成が悪くなり良いチーズカードが得られない、チーズの風味が悪くなるなどの影響が出てきます。
2.原料乳は必ず殺菌しましょう
牛乳の中には様々な細菌が含まれています。その中には製品を作る工程で問題を起こすものもあれば、できあがった製品の品質を悪くするものも含まれています。
また、私たちの健康を害するサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌、リステリア菌などが含まれている可能性もあります。現に、欧米では殺菌しない牛乳を原料とするチーズがもとで事故が発生した事例が報告されています。
「殺菌していない牛乳を使ったチーズこそが美味しいチーズである」と聞くことがありますが、そこには食中毒による事故という危険性も伴っています。
安全で品質の安定した製品を作るためにも、原料乳は必ず殺菌しましょう。
原料乳の殺菌方法
乳製品加工の原料乳の殺菌条件は、次のとおりです。
直火で加熱を行うと急激な温度上昇で、牛乳に含まれるタンパク質が熱で変性してしまい、レンネットを加えても固まりにくくなるので、原料乳を殺菌するときは、必ず湯せんで行い、加熱終了後は速やかに冷却して、熱の影響をできるだけ少なくしましょう。
また、原料乳の0.02%の塩化カルシウムを加えれば、熱の影響を受けていても凝固しやすくなります。
《原料乳の殺菌方法》
低温保持殺菌(LTLT殺菌)・・・原料乳を加熱して、63℃になったら30分間保持する殺菌(乳等省令の飲用乳の殺菌条件を参照)
①原料乳を湯せんにかけ、かき混ぜながら63℃まで加熱する。
②時々かき混ぜながら30分間、63℃を保持する。
③流水中で所定の温度まで、急速に冷ます。
3.衛生的な場所で、衛生的な器具類を使って加工しましょう。
排水や牛乳の運搬などの理由から、処理室で加工を行っている事例も多くみられます。必ず住宅の台所など衛生的な場所で、洗浄や殺菌の行き届いた衛生的な器具を用いて加工し、二次汚染を防止しましょう。
4.手洗いを慣行しましょう。
家庭での乳製品加工では、製造中に直接手指が触れる機会が多いので、洗剤を使って指の間までしっかり手洗いすることが大切です。また、手指に怪我があるときは、ゴム手袋を使うなど、直接触れない配慮が必要です。